昨日はレオナルド・ブラーボさん(gt)とのライヴでした。

レオナルド・ブラーボ(ギター)喜多直毅(ヴァイオリン)
レオナルド・ブラーボ(ギター)喜多直毅(ヴァイオリン)
2018年8月25日@雑司ヶ谷エル・チョクロ

昨日はタンゴの殿堂とも言うべき雑司ヶ谷エル・チョクロにて、ギター奏者のレオナルド・ブラーボさんとライヴでした。
お陰様で満席となりました。
お越しの皆様、本当に有難うございました!
当日いらしたお客様でご入場頂けなかった方もいらしたそうで大変申し訳ありませんでした!

演奏内容は告知していた通り、ピアソラ多め。
やはりヴァイオリンとギターの演奏会といえば『タンゴの歴史(Histoire du Tango)』は外せません。
この曲は組曲になっていて第一楽章から第四楽章まで、タンゴの変遷を辿るようになっています。

* I. 売春宿 1900 - Bordel 1900
* II. カフェ 1930 - Café 1930
* III. ナイトクラブ 1960 - Nightclub 1960
* IV. 現代のコンサート - Concert d'aujourd'hui

普通は時代が新しくなっていく様に以上の順番で演奏されます。

しかし今回は音楽の雰囲気とつながりを考えて、ちょっと変わった順番でメドレーで演奏しました。
おかげでかなり長〜い一曲となりました。
時代の前後関係はそっちのけになってしまいましたが、一つの音楽ストーリーとしてはかなり面白いものが出来たと思います。

それとこれはタンゴの歴史の第三楽章を演奏する全ての人の悩みだと思うのですが、エンディングがとにかくダサいのです!!!
実に酷い。
しかし今回のデュオでは新しいエンディングを勝手に作って弾きました。
作曲家には申し訳ないですが、これでエンディング問題は解決しました。
めでたしめでたし。

それと他に『ブエノスアイレスの冬』『鮫』『レビラード』『忘却』など、ピアソラの代表曲を演奏しました。
ピアソラ以外は『ロス・マレアドス』『パロミータ・ブランカ』『ヌエべ・デ・フリオ』『ノクトゥルナ』等。
他にそれぞれのソロで『コモ・ドス・エストラーニョス』(喜多)、『最後のコーヒー』(ブラーボ)を演奏しました。

ブラーボさんの『最後のコーヒー』は実に実に素晴らしかった!
前に弾いた和音と次に弾いた和音の響きがどの様に溶け合うかまで考え抜かれた様なアレンジ。
その和音のレイヤーがまるで風に揺れる何枚ものカーテンの様であり、そこに美しい旋律が絶えず歌の様に流れている。
しかもブラーボさんの美音です。
これは堪らない!
まさに彼の真骨頂だと思いました。
お客さんからも大喝采でした。

それに引き換え僕のヴァイオリンソロ…。
当日の朝方まで作っていたのですが、ちっとも練習が出来ておらず本番ではまるで初見のような状態でした。
あ〜、悔しいし残念でたまりません。

しかしタンゴのヴァイオリン無伴奏ソロに関してはちょっと思うところがあります。
たまにタンゴの無伴奏ソロをやって下さいと言われることがあるのですが、どうもしっくり来ない。
原因はヴァイオリンの急所・弱点とも言うべき和音かなと思います。
もちろんヴァイオリンは和音が出せないわけではないのですが、重音やアルペジオで和音を感じさせつつメロディを弾くとちょっとしたロマン派的巨匠主義みたいになってしまうのです。
ヴァイオリンコンチェルトの無伴奏カデンツというか、華麗で技術を見せる感じになってしまう。
そうすればするほど何かが失われていく様な気がする。
僕はこれが余り好きではないのです。

ということで、今回の『コモ・ドス・エストラーニョス』では出来るだけそうならない様に作ってみたのですが、練習不足でち〜っとも原曲の良さが出せなかった。
実に悔しいです。
これはトライ&エラーしかありません。

さてさて『タンゴの歴史』、かつては頻繁に弾いていた曲で体にしっかり入っていた曲なのに、完全に忘れていて大ショックでした。
10年くらい弾いていないんだから仕方がないと言えばそうですが、思い出すのにとても時間がかかるようになっていた。
歳かな〜???

またブラーボさんも僕が弾くたびに違うことをやるので大変だったのではないかと思います。
『今日はまるで綱渡り状態(安全ネットなし)ですよ!』とブラーボさん。
しかし多少の“事故”はあったものの、良い意味でとても緊張感のあるステージになりました。
音楽が“今・ここ”で誕生していく、そんな演奏が出来たことをブラーボさんも僕も喜びました。
それが客席まで届いていたらと思います。

それと今回のライヴのために一曲だけギター編曲(ロス・マレアドス)をしたのですが、これも楽しかった。
もちろんブラーボさんのギターアレンジには遠く及びませんが、彼も『コンセプトが見える編曲ですね』と言って喜んでくれました。
ギターとヴァイオリンの二重奏という制限の多い楽器編成ほど、様々なことが試せる。
そしてイマジネーションを掻き立てられる。
ちょっとクセになりそうです。

ブラーボさんとの次回公演はまだ決まっていません。
でも出来るだけ間をおかずに実現できたらと思っています。
実はタンゴのあの名曲のアレンジをすでに始めており(まだ半分しかできていませんが)、早くリハーサルしてみたい。
それと『タンゴの歴史』ももっと弾き込んで、さらに自由度を増して、『何だか分からないけど凄い!』みたいに出来たら嬉しいです。
ということで決定したらお知らせ致しますので、是非是非お越しください!

喜多直毅(ヴァイオリン)レオナルド・ブラーボ(ギター)
喜多直毅(ヴァイオリン)レオナルド・ブラーボ(ギター)
2018年8月25日@雑司ヶ谷エル・チョクロ

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