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5月, 2018の投稿を表示しています

デュッセルドルフより近況報告 ~その5~ 『Mein Schloss』ケルン公演の事・自閉症について

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済みません、随分更新が滞ってしまいました…。 結構忙しくしているのと、英語の生活で頭脳も疲れ、なかなかブログの更新まで手が回りませんでした。 さて先々週の木曜日、Orangerie-Theater Volksgarten(ケルン)にて『Mein Schloss』公演が行われました。 Mein Schlossケルン公演 @Orangerie Theatre, Köln / 17. May. 2018 僕個人の印象ですが、これまでの公演の中で最も集中力に満ちた舞台だったと思います。 緊張と弛緩からもたらされるリズム感。 作品中、様々なダンスと音楽が登場しますが、『今、まさに生まれている』又は『今、生きている』感がとても強かった。 振り付けがあろうが譜面に書かれてあろうが、この感覚は絶対に必要だと思います。 それがビビッドに感じられる公演でした。 振付:Jean Sasportes 作曲・コントラバス:齋藤徹 ダンス:深堀絵梨、Kenji Takagi ダンス:Chrystel Guillebeaud ダンス:皆藤千香子、Kenji Takagi ダンス:Kenji Takagi / チューバ&トランペット:Wolfgang Suchner アコーディオン:Ute Völker / ダンス:皆藤千香子 ヴァイオリン:喜多直毅 / ダンス:深堀絵梨 この作品は自閉症の身体性と内面世界を我々の解釈によってダンスに、また音楽にしたものです。 その為に公演参加者は関連書籍を読んだり、研究者の方の話を聞いたり、また自閉症の方本人の話を聞いたりもしました。 初演のリハーサルはブッパタールの自閉症施設で数週間にわたって行われました。 参考書籍の中でも自閉症を持つ林田直樹さんの本には彼らの身体感覚や内面についてつぶさに書かれており、とても参考になりました。 我々にとってなんて事のない刺激(音や光)が大きな苦痛だったり、或いは心地よいものだったりする。 また意図した動作が出来なかったりする。 しかし我々にはない才能や能力が彼らにはあり、それらを探る研究も行われているそうです。 こちらに詳しい研究報告があります。 大変興味深く、さほど長くはない文章です

デュッセルドルフより近況報告 ~その4~ 『Mein Schloss』リハーサルの事等

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今日は朝から怒られました、同じレジデンスに住んでいる人に。 60歳くらいの男性です。 多分、美術方面の人だと思う。 朝キッチンで大きな音がするので行って見たら、その男性がゴミ箱をひっくり返していました。 で、「何だ、ゴミの分別がされていないじゃないか!」「ここの住人は何でもいっしょくたにして捨てているのか!?『けしからん!」と怒っています。 怒りながら、今まで住人が捨てたゴミを可燃物・不燃物・プラスチック…に分けていたのです。 僕に向かってガーーーーッと言ってくるのですが、僕はこのレジデンスではゴミの分別は不要で、まとめて一つのゴミ箱に捨てて良いものだとばかり思っていました。 僕だけでなく他の住人も分別をしておらず、一つのゴミ箱に可燃物も不燃物もプラスチックも金属も捨てていました。 どうやら板橋区並みに、否、それ以上にドイツはゴミの分別に厳しいらしい。 ドイツのゴミの分別 男性が余りにも怒っているので、一緒にゴミ捨て場までゴミ袋を運びました。 そして分別したゴミを入れる箱の種類を教えてもらいました。 そしたら男性はにっこり笑って許してくれました。 めでたしめでたし。 さて三年目となる『Mein Schloss』の公演が明日となりました。 公演詳細: Mein Schloss Autismus Wuppertal/Düsseldorf-Bergisches Land e.V. in Zusammenarbeit mit Jean Laurent Sasportes この作品は主に自閉症の内面と、そこから現れる様々な身体の動きをモチーフに作られたダンス作品。 振り付けはJean Sasportesさん。 音楽監督は齋藤徹さん(contrabass)です。 メンバーは初回から変わらず、Chrystel Guillebeaud、Kenji Takagi、皆藤千香子、深堀絵梨(以上、ダンス)、Ute Völker(accordion)、Wolfgang Suchner(trumpet, tuba)、喜多直毅(violin)。 ChrystelとKenjiさんはピナ・バウシュ舞踏団のメンバーでしたが、現在はフリーで活動中。 皆藤千香子さんは在独の振付家です(今月末に彼女の作品がデュッセルドルフで上演され

デュッセルドルフより近況報告 ~その3~/リーダーシップについて

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ヴァイオリンソロの練習1 2018年5月10日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf ヴァイオリンソロの練習2 2018年5月10日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf 皆さん、こんにちは。 東京はいきなり寒くなったようですね! こちらは数日前まで夏日でハーフパンツ・Tシャツ・サングラスでしたがちょっと気温が下がりました。 相変わらず皆藤千香子さんのダンス作品のリハーサルです。 たまにカフェに行ったり外食もしていますが、リハの後はかなり疲れていて、早い時間でもすぐベッドに横になったりしています。 おかげで生活のリズムが規則正しくなりました。 やっぱり日中ある程度疲れるって事は必要なのかも知れません。 ダンサーのミロシュと 2018年5月11日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf さてさて今日は突然ですがリーダーシップについて考えたいと思います。 別に東京で書いたって良い記事なのです。 しかしちょっとこちらで営業的(リーダーとして)なことをしており、メールを書いたり仕事について思い巡らす時に、メンバーの顔が浮かぶからです。 僕は複数のグループのリーダーをしていますし、一回で終わるセッションでもブッキング・宣伝・内容作り(楽譜の用意)…、その他様々な役割を担っています。 大きな公演はアシスタントに手伝ってもらいますし相談に乗ってもらうこともあります。 しかし基本的に決定を下すのは僕の役目です。 音楽内容に関して。 作曲・編曲・選曲は僕が行うことが多いにしても、その楽器を知悉しているのはメンバーですので彼らのアイディアや演奏に委ねるところも大変大きい。 僕は自分の作品を作るために、それぞれの音楽経験や勉強してきたことを“拝借”しているのです。 リーダーとしてできる事は、大元のアイディアを提供し、それをシェアできる方法を考え、演奏の方向性を大まかに決めるだけ。 ステージでは彼らに成り代わって、ヴァイオリン以外の楽器を同時に弾く事は絶対に出来ません。 それに彼らにも宣伝や集客に協力してもらわなければ、お客さんが入りません。 僕一人の動員力なんてたかが知れています。 近頃は人

デュッセルドルフより簡単に近況報告 ~その2~

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ライン川を背に自撮り! 2018年5月6日、デュッセルドルフにて 毎日、皆藤千香子さんのダンス作品“We Need Fiction”のリハーサルをしています。 WE NEED FICTION: 皆藤千香子(振り付け)、Milos Sofrenovic(ダンス)、喜多直毅(ヴァイオリン) 2018年5月24日/25日/26日 @Weltkunstzimmer, Düsseldorf WE NEED FICTION  Ein Tanzstück von Chikako Kaido  Uraufführung : 24(Do). Mai.2018   Weitere Aufführung : 25. (Fri) 26.(Sa) Mai 2018  Jeweils: 20:00 Uhr  WELTKUNSTZIMMER Ronsdorfer Str. 77a, 40233 Düsseldorf      Mit: Milos Sofrenovic, Naoki Kita Ivan Geddert, Kanade Hamawaki, Felix Meyer-Christian, Judith Wilhelm, Jascha Viehstädt Chikako Kaido Foto: Hideto Maezawa, Ksenija Spanec, Chikako Kaido Advertising art: MATCH and Company Co.,Ltd. Kontakt und Kartenreservierung : chikakokaido@gmail.com   www.chikakokaido.com   In Zusammenarbeit mit dem Projektpartner WELTKUNSTZIMMER, Gefördert durch Kunststiftung NRW, Bezirksregierung Düsseldorf ,Japan Foundation, Hans-Peter-Zimmer Stiftung リハは毎日だいたい10:30に始まります。 寝泊まりしているのは会場のWeltkunszimmerに併設された宿泊施設なので、起きたらそのままリハーサ

デュッセルドルフより近況報告/ぐだぐだラジオに新コーナーを作ります。メール募集中!

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2018年4月26日、成田空港にて。 皆さん、こんばんは。 先週木曜日からデュッセルドルフにおります。 渡独直前まで演奏の仕事が重なったり事務的な作業がなかなか進まなかったりして、出国前夜までほんとバタバタしていました。 しかしおかげさまで無事こちらに到着! 今回も在独の振付家・皆藤千香子さんの新作(ダンス:Milos Sofrenovic)や、三年目となるJean Sasportesさん振付/齋藤徹さん作曲によるダンス作品『Mein Schloss~私の城~』への参加(ケルン、ボン)、またドイツ三箇所でSebastian Gramss(contrabass)+Harald Kimmig(violin)+徹さんとによる日独弦楽四重奏団、そしてパリではFrédéric Blondy(ピアノ)とのデュオが予定されています。 殊に初共演の方々からは大いに刺激を受ける滞在となることでしょう! 6/18帰国予定ですが、それまで一生懸命頑張りたいと思います! 実はもう千香子さんのリハーサルが始まっております…。 ダンサーのミロシュはセルビア出身でお母さんはイギリス人です。 チトー政権下のユーゴもボスニア戦争も経験しており、戦争中では自宅の隣の家が爆弾で吹っ飛んだのだとか。 そして混乱の真っ只中にある故国から英国へと渡り、そこでダンスを学んだそうです。 僕と歳はそんなに変わりませんが、色々と話を聞いていると、彼の凄まじい人生経験にただただ圧倒されます。 やっぱり、と言うか至極当然でもあるのですが、ミロシュはボスニアのシンガーソングライター・Jadrankaのことも知っていました。 僕はまだJadrankaさんが日本で活動をしていた頃、一時期サポートメンバーだったことがあります。 その話をしたら、ミロシュともすぐに打ち解けました。 そして彼女がどれだけ旧ユーゴの人々に愛されていたか、話してくれました。 Jadranakaが良く歌っていたŠto te nemaという曲の譜面起こしをしていたら、涙が出そうになりました。 今回の作品のタイトルは『we need fiction』。 直訳すると『私たちは(架空の)物語を求める』。 確かに。 このタイトルから想起されるイメージをダンスや音楽にしていくのは結構大変ですが、ミロシュは旧ユー