2019年11月8日金曜日

11/16おとがたり『太宰治/人間失格』公演@成城・第Q藝術

おとがたり:長浜奈津子(朗読)喜多直毅(ヴァイオリン)
おとがたり:長浜奈津子(朗読)喜多直毅(ヴァイオリン)

11/16は俳優座女優の長浜奈津子さんと太宰治『人間失格』の朗読会を行います。
会場は成城学園の第Q藝術。

今年4月に奈津子さんと石川啄木の『一握の砂』と『ローマ字日記』を題材にした朗読会を行いました。
かなり尖った作品となり個人的に大満足。
奈津子さんも本番では何かが取り憑いたかの如きパフォーマンスで、予想を遥かに超える凄いものが誕生したと思っています。
この世界観でもっと作品作りがしたいと思いました。
しかし今回の『人間失格』、稽古を重ねるほどに啄木の世界観と地続きとは行かないと思い知らされています。

啄木の言葉にも、太宰の言葉にもあるノイズを感じる。
擦過音的なサウンド。
しかしその温度や湿度や重量や速度は全く違い、啄木のが刺し貫く痛みとすれば太宰のは鈍痛です。
音楽でもそう言う“痛み”を出せたらと思っています。

さてさて長いのですが、小説から好きな箇所を引用します。
主人公・葉蔵が中学校のクラスメイトの竹一を自宅に呼んで画集を見せた時の話です。
葉蔵は絵が好きで自分でも描いていました。
竹一は“ちょっと頭の弱い子”とされており、葉蔵は半分彼を馬鹿にしていました。
ところが葉蔵は、周りの気を引くためにわざと道化を演じているのを竹一に見抜かれてしまいます。
それからと言うもの、わざと竹一に親切にしたり家に呼んだりしておもねるのです。

いつか竹一が、自分の二階へ遊びに来た時、ご持参の、一枚の原色版の口絵を得意そうに自分に見せて、そう説明しました。
それは、ゴッホの例の自画像に過ぎないのを知っていました。タッチの面白さ、色彩の鮮やかさに興趣を覚えてはいたのですが、しかし、お化けの絵、だとは、いちども考えた事が無かったのでした。
「では、こんなのは、どうかしら。やっぱり、お化けかしら」
自分は本棚から、モジリアニの画集を出し、焼けた赤銅のような肌の、れいの裸婦の像を竹一に見せました。

竹一は眼を丸くして感嘆しました。
「地獄の馬みたい」
「やっぱり、お化けかね」
「おれも、こんなお化けの絵がかきたいよ」
 あまりに人間を恐怖している人たちは、かえって、もっともっと、おそろしい妖怪を確実にこの眼で見たいと願望するに到る心理、神経質な、ものにおびえ易い人ほど、暴風雨の更に強からん事を祈る心理、ああ、この一群の画家たちは、人間という化け物に傷めつけられ、おびやかされた揚句の果、ついに幻影を信じ、白昼の自然の中に、ありありと妖怪を見たのだ、しかも彼等は、それを道化などでごまかさず、見えたままの表現に努力したのだ、竹一の言うように、敢然と「お化けの絵」をかいてしまったのだ、ここに将来の自分の、仲間がいる、と自分は、涙が出たほどに興奮し、「僕も画くよ。お化けの絵を画くよ。地獄の馬を、画くよ」と、なぜだか、ひどく声をひそめて、竹一に言ったのでした。

自分は、小学校の頃から、絵はかくのも、見るのも好きでした。
けれども自分は、竹一の言葉に依って、自分のそれまでの絵画に対する心構えが、まるで間違っていた事に気が附きました。美しいと感じたものを、そのまま美しく表現しようと努力する甘さ、おろかしさ。マイスターたちは、何でも無いものを、主観に依って美しく創造し、或いは醜いものに嘔吐をもよおしながらも、それに対する興味を隠さず、表現のよろこびにひたっている、つまり、人の思惑に少しもたよっていないらしいという、画法のプリミチヴな虎の巻を、竹一から、さずけられて、少しずつ、自画像の制作に取りかかってみました。
 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定し、けれどもその絵は、竹一以外の人には、さすがに誰にも見せませんでした。


もしかしたらお化けは醜悪でも何でもない。
お化けはお化けであり、本人にとって美醜は本質ではない。
多分、見る人が感じるだけのこと。
ただお化けを強烈に激しく感じることによって、人間は尋常ならざる生を得るのだと思います。
音楽も一緒。

引用の通り、葉蔵は子供の頃、素晴らしいお化けの絵を描いたのですが成人してからは描かなくなってしまいました。
お化けの代わりに漫画や春画の写しを描いていたのです、アルコールに溺れながら。
しかし彼は落ちぶれの身でありながら、ことあるごとに周囲の人に『あのお化けの絵を見せてやりたい』と言う欲求にかられる。
そうすれば自分を理解させられると信じているのです。
或いは『もう一度生きられる!』と思ったのかも知れません。
でも見せられる絵はない。

それではダメなのです。
今のお化けを描かないと。
そして描き続けないと。
お化けの絵を描かずに何年も過ごし、葉蔵はついに破滅してしまうのでした。

この小説も太宰にとってはお化けの絵だったのだと思います。

今回の朗読会では上に紹介した場面も登場します。
長浜奈津子さんと一緒に作り出す朗読とヴァイオリンの世界。
あなたもあなたの中のお化けを見に来ませんか…?
お待ちしております!

【太宰治『人間失格』~道化と狂気のモノロギスト~】

『自分は、しばらくしゃがんで、それから、よごれていない個所の雪を両手で掬い取って、顔を洗いながら泣きました。』

真実と虚実の谷間を彷徨う男一人。
虚ろな目に映るのは、過ぎ去っていく一切…。

東北の田舎の裕福な家庭に生まれ育った葉蔵。厳格な父の存在と使用人による性的虐待が、彼の心に初源的な無力感と対人恐怖を植え付ける。彼にとって人間環境は過酷であり、そこを生き抜く術として葉蔵は人々の気持ちを先読みし、道化を演じる事により『気に入られる』ように務める。それは彼の恐れと弱さを覆い隠し、人々の好意を得るためには十分であったが、人を欺き続ける罪悪感も同時に強く抱えることになる。成人した後も人間恐怖は心の中で肥大し続け、激しく彼を苛むものとなった。他者に対する恐れ、不信感、諦めは、葉蔵を優しく庇う女性達に対しても抱かれた。やがて全てに絶望した葉蔵は死を希求する。このような精神状態が続く中、アルコールと薬物への依存は悪化し、遂に彼の人格は荒廃した。しかし発狂の後、彼の心にやっと初めての凪が訪れる。
物語が進むにつれ、葉蔵が徐々にモラルから逸脱し人として堕落していくのは明らかだが、一つ一つのエピソードに於ける彼の行動は、人間の恐怖から自分を守ること、“阿鼻叫喚”の世界で何とか生き延びることが動機となっている。全ては生きるため。
本公演は問いに満ちている。葉蔵は過ちを犯したのではなく、ただ悲劇の中に投げ込まれ道化の仮面をかぶることでしか生きられなかったのではないだろうか?彼は本当に人間として失格だったのか?そして私達は果たして『人間合格』なのであろうか?

出演:おとがたり
   長浜奈津子(朗読)
   喜多直毅(ヴァイオリン)

日時:2019年11月16日(土)14:30開場/15:00開演
会場:アトリエ第Q藝術1Fホール(成城学園)
   東京都世田谷区成城2-38-16
   03-6874-7739

料金:予約¥3,500/当日¥4,000
ご予約・お問い合わせ:
   nappy_malena@yahoo.co.jp(長浜)violin@nkita.net(喜多)
※メールタイトルは「おとがたり予約」、メール本文に《代表者氏名》《人数》《連絡先電話番号》を 必ずご記入の上、お申し込み下さい。

【プロフィール】
おとがたり
女優・長浜奈津子とヴァイオリン奏者・喜多直毅は2013年に朗読と音楽によるコラボレーションで初共演。同年、長浜による一人芝居でも共演。(なつきの会公演「 ある晴れた夏の日 ‐エルフとホビット‐ 」辰澤敦史氏書下ろし作品@六本木ストライプハウススペース)その後、文芸作品の朗読にフォーカスし、首都圏を中心に意欲的に活動を行なっている。これまで市川文学ミュージアム『永井荷風展 ~荷風の見つめた女性たち~』や船橋市の文化事業、都内ライブハウス等で公演を行なっている。
物語の持つファンタジーを声や楽器の音を通して空間にありありと描き出すために、即興的に互いの間・抑揚・言葉に反応しながら進行するパフォーマンスは臨場感にあふれ、聴く人はまるで物語の中に居合わせるかのような印象を抱く。来場者はもとより、文学研究者からも高い評価を得ている。

長浜奈津子
桐朋学園演劇科卒業後、劇団俳優座へ。女優・歌手・朗読家として活動。ひとり語り『朗読空間』(於:六本木ストライプハウス)では永井荷風、坂口安吾、泉鏡花、小泉八雲他、文学作品を語る。市川市文学ミュージアム『荷風忌』では三味線語り、ヴァイオリニスト喜多直毅氏との朗読ユニット"おとがたり"では『濹東綺譚〜大江匡とお雪』上演。続いて2019年4月石川啄木作品を構成した作品「啄木といふ奴」へ出演。演劇では同年6月ロシア・ルーマニア海外公演『クスコ〜愛の叛乱』歌手とモナ役、9〜10月俳優座劇場プロデュース公演、音楽劇『人形の家』乳母ヘレーネ役で出演。

喜多直毅
国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲を、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、そのオリジナリティと精神性において高く評価されている。他に黒田京子、齋藤徹との演奏や邦楽・韓国伝統音楽奏者・現代舞踏家との共演も数多い。欧州での演奏も頻繁に行う。我が国に於いて最も先鋭的な活動を行うヴァイオリニストの一人である。

2019年11月2日土曜日

喜多直毅・田中信正・西嶋徹トリオの次回ライヴは12月22日(日)です。

喜多直毅(ヴァイオリン)田中信正(ピアノ)西嶋徹(コントラバス) 2019年10月30日@公園通りクラシックス
喜多直毅(ヴァイオリン)田中信正(ピアノ)西嶋徹(コントラバス)
2019年10月30日@公園通りクラシックス

田中信正さん(ピアノ)、西嶋徹さん(コントラバス)とのライヴ、楽しかったです!!!
もともと喜多+田中さん、喜多+西嶋さんという二つのデュオがあって、それぞれアルバムも作っていました。
この二つを統合してトリオとして演奏してみたいと思い、この活動を始めました。
三人の相性もなかなか良く、これまでの二回のライヴを通して手応えを感じました。
それと同時に「もっと行ける!!!」とも思っています。

今は印象として暗い曲が多く、それはそれで僕の好きな世界なのですが、瞬発力に優れた田中さんと西嶋さんとのアンサンブルですので何かそう言う曲もやっていけたらと思っています。
今回はブラジルの曲を二曲演奏しましたが本当に楽しかった。
三人の間で音楽が生まれ、発展を遂げて、そして惜しまれながら終わる…という過程にどっぷりと浸かることが出来ました。

ゆくゆくはオリジナルのみで構成したプログラムでライヴを行いたい。
喜多クアルテットとはまた別の世界が誕生するかも知れません。
もしかしたら似通った音楽かも知れませんが、この素晴らしい演奏家二人との共演はそれ自体が喜びであり、何ものにも勝るものです。
他でやっている音楽と地続きであろうがなかろうが、演奏そのものを楽しむことが出来ればそれが会場に溢れるのではないでしょうか?

このトリオの演奏、次回は12/22(日)に予定されています。
会場は雑司ヶ谷エルチョクロ。
なんとクリスマスライヴです!!!

これまで二年間連続して田中さんとエルチョクロでのクリスマスライヴをして来ましたが、今年は西嶋さんにも参加して頂き更に華やかにお届けしたいと思います。

第一部はいつものレパートリーから演奏します。
第二部はクリスマスにちなんだ曲をお届けします。
お客さんに歌って頂くコーナーもあり。
絶対に思い出に残るライヴになるに違いありません。
年末の忙しい時期かと思いますが、ぜひお誘い合わせの上お越しください!

出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
   田中信正(ピアノ)
   西嶋徹(コントラバス)
第一部:暗く深い音楽選
第二部:クリスマスにちなんだ曲

日時:2019年12月22日(日)14:00開場 15:00開演
会場:雑司が谷TANGO BAR エル・チョクロ
   〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-2-8
   03-6912-5539

料金:ご予約¥4,000 当日¥4,500 学生¥2,000
予約・問合せ:エル・チョクロ
   03-6912-5539/info@el-choclo.com
   violin@nkita.net(喜多)

キャンドルの灯揺れる会場で共に聖夜を祝いましょう。
皆さんのお越しをお待ちしています!!!

2019年10月22日火曜日

喜多直毅クアルテット福岡公演を最後に西日本ツアーは終了しました(寂しい)。

2019年10月15日 喜多直毅クアルテット福岡公演@西南学院大学ホール
2019年10月15日
喜多直毅クアルテット福岡公演@西南学院大学ホール
終演後、メンバーとスタッフの皆さんで記念撮影。

10/10からスタートし10/15まで西日本5カ所を回った喜多直毅クアルテットツアー。
最終日の福岡の後、東京に戻ってから他のライヴが続きいつの間にか一週間たってしまいました。
しかし今なお、このツアーの演奏の楽しかったことや主催者の方々・お越しくださった方々への感謝の気持ちで胸がいっぱいです。

最終日の福岡の会場は西南学院大学のホール。
丁度一年ぶりの福岡での演奏でしたが、昨年に引き続きお越しいただいた方もいらして大感謝です。
初めての方にはどんなふうに聴こえたのか興味津々ですが、アンケートのフィードバックによると映画のようにドラマティックに感じてくださった方が多かったです。

クアルテットでは東京以外の公演は珍しく、なかなか生演奏を聴いて頂くチャンスがありません。
CDは二枚出していますが、それだって一度生の演奏を聴いてからお買い求めになる方が大半だと思います。
ですから我々にとって色々な会場で聴いて頂くことは本当に重要なことなのです。

アンケートが全てを語っているわけではないと思いますが、しかし読ませて頂く限り、我々の演奏は確かに届き、聴いてくださった方の胸に何かを刻むことが出来たのではないかと思っています。
広島で被爆した方はご自身の人生を音楽に重ねて下さいました。
あるクリスチャンの女性は、懊悩する人間に対して『それでいいのか?どうするのか?』と問い迫る声になぞらえて下さいました。

僕自身、音楽と演奏の喜びや楽しさを感じつつ、一方で悩みながら、袋小路でもがきながら続けて来たクアルテット。
この音楽が聴く人の奥深くまで響いたことが嬉しくてならず、更に励みを与えられました。
新鮮な気持ちで東京での音楽作りが出来そうです。

変な言い方ですが、日本は広かった。
いつも東京でしか演奏していないクアルテットの音楽。
しかし全国にはまだ我々の演奏も音楽も知らない人々がいるのです。
『こんな音楽が今の日本にあってくれて嬉しい』(アンケートより)。
まだまだ行くべき町があるようです!

だいぶ前になりますが、亡くなったコントラバス奏者の齋藤徹さんがクアルテットのライヴを聴いて大変喜び、ご自身のブログに感想と応援の文章を書いてくださったことがあります。
おろかにもその記事を保存しておきませんでした。
当時、こんなに早く亡くなるなんて思いもしませんでしたので…。
ブログ自体はまだ残されていますが、該当記事は膨大なエントリーの中にあってまだ見つけられずにいます。
あの記事をもう一度読みたいと思っています。
お客様から頂いた感想と共にこれからの活動の励みになるでしょう。
そして事あるごとに読み返し、初心を思い出せるに違いありません。

さて西日本ツアーを終えて、クアルテットのライヴは今年あと一回となりました。
場所は神奈川県相模原市。
お寺での演奏です。
寒いかも知れませんので、十分防寒対策をしてお出かけください!!!

2019年11月9日(土) 喜多直毅クアルテット@相模原臨済宗常福寺 喜多直毅(ヴァイオリン・作曲)北村聡(バンドネオン)三枝伸太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス)
2019年11月9日(土)
喜多直毅クアルテット@相模原臨済宗常福寺
喜多直毅(ヴァイオリン・作曲)北村聡(バンドネオン)三枝伸太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス)

出演:喜多直毅クアルテット
   喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   三枝伸太郎(ピアノ)
   田辺和弘(コントラバス)
内容:喜多直毅オリジナル作品

日時:2019年11月9日(土)17:30開場 18:00開演
   神奈川県相模原市南区新戸2516
   Tel:046-251-5530 Fax:046-255-3372
アクセス:
◉小田急線「相武台前駅」下車、磯部行バス「常福寺」下車徒歩1分。原当麻駅行バス「武井橋」下車徒歩5分。
◉JR相模原「相武台下駅」下車徒歩12分。磯部行バス「常福寺」下車徒歩1分。

料金:¥3,000(前売り当日共)※要予約+終演後(希望者)会食¥1,000
◉お問い合わせ・予約申し込み
Tel:046-251-5530
Fax:046-255-3372
◉お問い合わせ・制作
Tel:03-3419-6261

さてツアー中に台風19号が日本を襲い、大きな被害をもたらしました。
殊に前回の台風15号で大きな被害を受けた千葉県は度重なる台風によるダメージも大きく、住民の方の失意の程を察してあまりあるものがあります。
被害地域の方々の暮らしが1日も早く戻りますように、また命を落とされた方々のご冥福をお祈りします。
大切なご家族、ご友人を失われた方々の悲しみが早く癒されますように。

2019年10月8日火曜日

喜多直毅クアルテット西日本ツアー、いよいよ木曜日から!!!:10/10神戸→10/11広島→10/12松山→10/14尾道→10/15福岡

喜多直毅クアルテット 左より:三枝伸太郎(piano)北村聡(bandoneon)喜多直毅(violin)田辺和弘(contrabass) 2019年10月7日リハーサル
喜多直毅クアルテット
左より:三枝伸太郎(piano)北村聡(bandoneon)喜多直毅(violin)田辺和弘(contrabass)
2019年10月7日リハーサル

いよいよ喜多直毅クアルテットの西日本ツアーが始まります。
旅程は10/10(木)神戸、10/11(金)広島、10/12(土)松山、10/14(月祝)尾道、10/15(火)福岡です。
地元の皆さん、ぜひお誘い合わせの上お越しください。

このクアルテットはメンバーの全員がアルゼンチンタンゴを演奏します。
それと並行してアルゼンチンタンゴ“以外”の音楽にも精力的に取り組んでいます。
また作曲もします(ヴァイオリニストとコントラバス奏者は歌手活動もしています…)。
これは一人一人、感覚が自由でオープンだということ。

現在、世界のミュージックシーンにおいて、我々の世代の演奏家の間では演奏分野の混血が進み『これは〇〇というジャンル』とカテゴライズ出来なくなっていますがタンゴの世界も同様。
その姿形が年月のうちに変質したとしても、音楽が音楽であることには変わりません。
源流から受け継がれた音楽的語法さえ変化するかも知れない。
しかしその中に息吹や生命がありありと感じられるなら、有りようが多少変わろうと音楽はビクともせず、演奏され聴かれる価値があるのだと思います。

そんな音楽を共に演奏出来るのが、北村、三枝、田辺の各氏です。
繊細かつ大胆なバンドネオン、エネルギーに溢れるピアノ、迫力と『うた』に満ちたコントラバス。
それぞれのソロパートが曲の随所に現れます。
今回のツアーを通して、一人一人の聴かせどころ・見せどころが豊富にありますので、個々人のプレイにもご注目頂きたいと思います。

上に記した通りこのカルテットのメンバーは全員タンゴプレイヤーではあるものの、内容的には伝統的なタンゴの語法は余り用いずに自由に音楽づくりをしてきました。
美しいか、カッコ良いか、面白いか…というところは二の次、三の次にし、サウンドが内面や精神や感情にどれだけ肉迫しているか、タイムラインに人生の四季があるか、を大切にしてきました。
そしてヴィジョンをどのように音楽で描くか。
例えば一人の酒乱の男、岸壁に打ち上げられた死体、真冬のさすらい人、戦場に張り巡らされた鉄条網。
こんなヴィジョンを音楽にすると共に、どの曲にも通奏低音的なノイズとして『寒さ』をこめて来ました。
やはり自分にとって『東北』は大事な要素の一つだと思ったからです。

生まれ故郷、ルーツ、地域性、郷土愛を大切にする音楽の一つにタンゴがあると思います。
タンゴはブエノスアイレスへの郷愁を歌う、ある時はしみじみと、ある時は声を振り絞るように。
シャンソンは、まるでパリを女神のように讃える。
であれば、このクアルテットで演奏している僕の音楽は東北への讃歌なのかなと思います。
声にならない咆哮、狂おしいほどの郷愁、そして情念に満ちた讃歌です。

さてさて広島・尾道は二年前に、福岡は昨年、このグループで演奏を聴いて頂いております。
神戸と松山には今回初めてお邪魔します。
各会場、出来るだけ曲が被らないようにプログラムを作ってみました。
しかし何曲かは僕の好きな曲を全会場で演奏させて頂きたいと思います。

各会場では喜多クアルテットのCDや個人のCDの販売も行います(神戸ではご注文のみ承ります)。
初めての方も、前回お越しの方も、是非是非我々の演奏を聴きにお越しください!


【ツアー詳細】

■10/10(木)神戸
共演:角正之(ダンス)
   レナート・レオ(ダンス)
   丹羽祥子(ダンス)
   越久豊子(ダンス)
日時:10月10日(木)18:30開場19:00開演
会場:CAP.Y3.5Fホール(海外移住と文化の交流センター)
   650-0003 兵庫県神戸市中央区山本通3-19-8
   電話 078-222-1003
料金:前売り3,500円 当日4,000円
申し込み:
◉CAP(下田)電話・ファックス 078-222-1003/info@cap-Kobe.com
◉DCP(角)電話 090-3622-1625/email=sumish@kazemai.com
主催:C.A.P(芸術と計画会議)
共催:D.C.P(ダンスキャンププロジェクト)

■10/11(金)広島
日時:2019年10月11日(金)開場18:30/開演19:00
会場:広島市西区民文化センター
   広島市西区横川新町6番1号
   082-234-1960
料金:大人前売り券 ¥3,000/当日券¥3,500
   学生前売り券 ¥1,000/学生当日券¥1,500
予約・問い合わせ先:080-6326-4047、keikuro0101@gmail.com(黒田)

■10/13(土)松山
日時:2019年10月12日(土)19:30開演(18:30受付開始)
会場:utaco drip
   愛媛県松山市大手町2-9-20
   JR松山駅前駅より徒歩1分
料金:予約¥3,500/当日¥4,000
   utaco drip店頭にてご予約承ります。
   ◆10歳以下のお子様のご入場はお断りする場合がございます。
予約:violin@nkita.net
※メールタイトルは「喜多直毅クアルテット10/12予約」、メール本文に《代表者氏名》《人数》《連絡先電話番号》を 必ずご記入の上、お申し込み下さい。

■10/14(月・祝)尾道
日時:2019年10月14日(月・祝)開場18:00/開演18:30
会場:JOHN Burger & Cafe 
   広島県尾道市東御所町3-25
   0848-25-2688
料金:当日のみ(予約無し)3,000円(要ワンドリンクオーダー)
お問い合わせ先:0848-31-2212(杉山)

■10/15(火)福岡
日時:2019年10月15日(火)18:30開場/19:00開演/20:00頃終演予定
会場:西南学院大学 西南コミュニティーセンター ホール
   福岡県福岡市早良区西新6-2-92
   tel. 092-823-3952
料金:ご予約¥3,000/当日¥3,500/学生料金¥2,000
ご予約・お問い合わせ:
   090-6291-0610(トモナガ)092-712-7350(fax兼)grade-up@ezweb.ne.jp
   violin@nkita.net(喜多)
主催:喜多直毅コンサート実行委員会
後援:福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団



喜多直毅クアルテットプロフィール
【喜多直毅クアルテット】
2011年、ヴァイオリニスト喜多直毅によって結成された四重奏団。演奏される楽曲は全て喜多のオリジナル作品であり、その出自とも言うべきアルゼンチンタンゴからフリージャズ、即興演奏、現代音楽まで、様々な要素を呑み込んで再構築された、比類なき音楽である。ロシア音楽を彷彿とさせる濃厚な旋律と共に、日本の伝統音楽に通ずる“間”の感覚を併せ持った彼らの音楽は、その深い精神性を高く評価されている。
4人のメンバーはそれぞれの楽器における国内屈指のタンゴ奏者と目されつつ、卓越した実力により、ジャンルを超えてシーンの最先端で活躍している。この4人においてこそ実現する超絶なる表現が、聴衆の気魂を揺さぶり“ドゥエンデ(Duende)”を呼び醒ます。

圧倒的な演奏力と物語構成力で、期待を裏切らない進化をみせるクアルテット。無音の部分にこそひた寄せる鬼気がある。人間の業や人生の割り切れなさが照射され、鮮烈なイメージ喚起力とともに変転していく。聴いていて全く楽ではない彼らの音楽は、「表現せずにはいられない」という崖っぷちの必然性を常に感じさせる点で芸術の根源に忠実だ。ひりつくほどに美しい。個々のメンバーの今後の成熟を予想すると末恐ろしいほど。(JazzTokyo『#02 喜多直毅クアルテット『Winter in a Vision 2』リリース記念コンサート』2018年1月1日)
文章:伏谷佳代(音楽評論家)

メンバープロフィール
喜多直毅(ヴァイオリン・作曲)
国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲を、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、そのオリジナリティと精神性において高く評価されている。これまでにアルバムを二作品リリース。他に翠川敬基(vc)、黒田京子(pf)、齋藤徹(cb)との演奏や邦楽・韓国伝統音楽奏者・コンテンポラリーダンサーとの共演も数多い。欧州での演奏も頻繁に行なっている。我が国に於いて最も先鋭的な活動を行うヴァイオリニストの一人である。
https://www.naoki-kita.com

北村聡(バンドネオン)
関西大学在学中にバンドネオンに出合い小松亮太、フリオ・パネに師事。世界各国のフェスティバルに出演。これまでに鈴木大介、舘野泉、波多野睦美、夏木マリ、エゴ・ラッピン、パブロ・シーグレル、ミカ&リチャード・ストルツマン、東京交響楽団と共演。タンゴだけに留まらず他ジャンルの音楽家と交流し、繊細な表現には定評がある。NHK「八重の桜」、映画「そこのみにて光輝く」「マスカレード・ホテル」をはじめ様々な録音に参加。現在喜多直毅クアルテット、三枝伸太郎Orquesta de la Esperanza、大柴拓カルテットなど数多くの楽団に参加、活動中。

三枝伸太郎(ピアノ)
東京音楽大学大学院音楽科作曲専攻修了。ピアノの内部奏法を含む美しくも時として激しい独特な奏法に高い評価を得る。また作曲家として映画音楽、演劇のための音楽を多数手がけ、様々なジャンルでピアニスト、アレンジャー、音楽監督としても活躍中。2014年自身のオリジナル曲を主に演奏する三枝伸太郎Orquesta de la Esperanzaを結成、モダンタンゴからジャズ、現代音楽の要素を含むオリジナリティある作品を発表し続けている。

田辺和弘(コントラバス)
クラシック、アルゼンチンタンゴ、即興的な音楽表現などで活動するベーシスト。東京芸術大学在学中からクラシックでの活動をする中でアルゼンチンタンゴと出会う。これまでに国内の多くのタンゴミュージシャンと共演、アルゼンチンのミュージシャンとも若手からタンゴ全盛時代のミュージシャンとも共演している。様々な活動をする中、2010年に即興演奏の第一人者コントラバス奏者の齋藤徹と出会う。その後はタンゴを始め他の音楽の中でも即興的なアプローチを試みている。その中でも喜多直毅クアルテットに参加。ジャンル関係なく音楽自体の持つエネルギーを表現するべく模索、活動している。