投稿

7月, 2019の投稿を表示しています

挫折と初心と喜多クアルテット

イメージ
齋藤徹さんが亡くなって暫く経ちました。 これまでの歩みを振り返って、徹さんとの出会いは自分の人生の中でとても大きく、それだけに逝ってしまった事も大きな出来事です。 徹さんとの別れが自分の音楽人生の一つの節目ではないかと最近強く感じています。 この10年間、音楽活動に様々な事があったように、プライベートな生活にも大きな出来事が多々ありました。 寧ろプライベートな生活の方にこそ、巨大地震があり大津波があったと言って過言ではありません。 音楽活動は実は影のようなもので、実生活はもっとドラマティックで波乱に満ちたものでした。 いつの日か、この日々にどんな事を経験したか詳しく記したいと思っています。 それはきっと様々な人の役に立つ文章になると信じているからです。 しかし今はまだ伏せておきます。 ただ少しだけ、10年前のことを思いつくままにラフに書いてみたいと思います。 人様に迷惑をかけない範囲で、です。 2009年4月13日、10年前の演奏姿。翠川敬基さんのバンド“緑化計画”のライヴ。 @アケタの店(東京・西荻窪) 様々な人に出会いました。 両親から虐待され、40歳を過ぎてもその呪縛から逃れられずに苦しむ男性。 他者との関係だけではなく自分自身との関係がうまく築けずに悩んでいました。 彼とは何度か実際に会って色々な話をしたり、カラオケに行ったりしました。 高学歴なのに、能力があるのに、一度人生で躓いてしまった。 それが元で職を失い、家族を支えるためアルバイトスタッフとして不本意な仕事をしている。 それは社員さんに郵便物を配って回る仕事でした。 「仕事があるだけ感謝」と言って、自分自身の今の姿を何とか受け入れようとしていました。 めげつつもめげない様に、負けそうになりながらも負けない様に…、まるで嵐に揺れる一本の草のごとく生きている人でした。 拒食症の女性もいました。 彼女ともたまに会って食事をしたり、カラオケに行ったりしました。 旦那さんとの関係を断ち切って新しい人生を歩みたいのに、どうしても“元の鞘”に戻ってしまう。 そんな自分が嫌で嫌で仕方がないと言っていました。 別の女性は子供の頃にイジメにあった経験がトラウマとなり、ずっと引きこもっていました。 やっと外に出られる様になり、社会との関わり作りのリハビ

来週水曜日(7/24水)は喜多直毅クアルテット『青春の立像』!!!

イメージ
喜多直毅クアルテット 喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)三枝伸太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス) 危うく『青春の蹉跌』と書くところでした。 違います、『青春の立像』です。 いきなりですが、人間の身体に胸郭ってありますよね? 僕にはこれが鳥籠に見える。 この中に人は一羽の鳥を飼っており、強い思いや願いを抱く度、鳥籠の中で暴れ騒ぐ。 そして胸を突き破って外に飛び立とうとする。 この鳥の持つエネルギーを青春と呼びたいのです。 とてもとても強いエネルギーです。 皆さん、カラスを間近で見た事がありますか? 案外大きいですよね。 嘴も大きく、鋭く、強そう。 そして声も間近で聞くと思いの外大きくて驚く。 いつだったか怪我をしたカラスが道で踠いていて、バサバサと羽ばたきをしていました。 ごめんなさい、動物病院へは連れて行きませんでした。 正直、気持ち悪いと思ってしまいました。 でもその羽ばたきの異常なまでの強さは今でも強く印象に残っています。 人間は胸郭の中に、この強い羽と大きな鳴き声を持った鳥を飼っている。 大半の人がこの鳥を無事に飼い慣らして生きていく。 エネルギーを建設的でポジティブな方向に向け、他者と睦み合い、自己実現を叶えていく。 でもそれが出来ない人たちもいて、彼らは胸の中の鳥同様、悲鳴を上げたり暴れたりする。 暗いエネルギーが暴発し、時に雑踏に車で突っ込んで人をナイフで刺したりもする。 警官から拳銃を奪い、罪なき人を撃つ。 またある人たちは鳥籠から羽ばたくことが出来ず、長い間、閉ざされた日々を送る。 鳥籠の中は掃除されず、腐り果てた餌や糞でいっぱいなのです。 負のエネルギー・鬱屈としたエネルギーこそ、僕が音楽にしたいものです。 それは何故か? 問題があると思うからです。 この問題が気になって仕方がない。 この問題は音楽でどうにか出来るわけではない。 しかし問題がある限り、僕はそれを看過できず、やっぱり音楽を通して触れてみたい。 僕は別にルポライターでもドキュメンタリー作家でもなく、評論家でも犯罪心理学者でもない。 文学の人間でもない。 ただのヴァイオリン奏者に過ぎないのだから、何もこんな問題に題材を得なくても良いのです。 しかし自分の胸郭にも、も

タンゴ関連の演奏後記とお知らせ

イメージ
このところアルゼンチンタンゴのライヴが続きました。 6/28は池田みさ子さん(pf)早川純さん(bn)とのトリオ、6/30は北村聡さん(bn)松永裕平さん(pf)と自分がリーダーのトリオ、7/6は京谷弘司さん(bn)淡路七穂子さん(pf)チヅコ&エセキエルのお二人(dance)とディナーショー、7/7はレオナルド・ブラーボさん(gt)とのデュオ。 それぞれ楽しいライヴとなりました。 自分がリーダー or 半分リーダーとして行ったライヴは満席にして頂き大変嬉しかったです! 喜多直毅タンゴトリオ: 喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)松永裕平(ピアノ) 2019年6月30日@雑司が谷エルチョクロ 喜多直毅タンゴトリオ: 喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)松永裕平(ピアノ) 2019年6月30日@雑司が谷エルチョクロ 喜多直毅(ヴァイオリン)Leonardo Bravo(ギター) 2019年7月7日@雑司が谷エルチョクロ 喜多直毅(ヴァイオリン)Leonardo Bravo(ギター) 2019年7月7日@雑司が谷エルチョクロ どうも僕はタンゴに、というかタンゴヴァイオリンに保守的なところがあり、タンゴヴァイオリンとはこう言う音色でなくてはダメだとかこう言うフレージングじゃなくてはダメだと思ってしまう。 それは単純に自分がCDや生演奏で聴いた巨匠タンゴヴァイオリニストたちの言わば『亡霊』なのですが、実際の自分はそのようには弾けない。 演奏技術も音楽性も断然劣る。 そして僕の中にはタンゴヴァイオリンと規定しているのとは全く異なる絵の具があって、それをタンゴに使ってはダメだと信じ込んでいる。 例えばノイズだったり、荒々しいジプシーフィドル的なボウイングだったり。 タンゴは『型』や『スタイル』の強い音楽なので、そこから逸脱することを恐れているのです。 とりあえずその『型』や『スタイル』を脇に置いて、『もう逸脱しても良いや、何か自分流の“タンゴ”が生まれれば』と思って始めたのが喜多直毅クアルテットでした。 それはタンゴに聴こえなくても良いし、もはや自分の中でタンゴで無くなっても良い。 自分にとってのリアリティと必然性に満ちた音楽ならばそれで構いません。 最近再び型のあるタンゴを

7月7日(日)は雑司が谷エルチョクロで喜多直毅&レオナルド・ブラーボ

イメージ
2018年8月25日喜多直毅(ヴァイオリン)レオナルド・ブラーボ(ギター) 雑司が谷エルチョクロ 七夕の日の午後、レオナルド・ブラーボさんとのデュオライヴを行います。 会場は雑司が谷エル・チョクロ。 時間は14:00開場15:00開演です。 (まだお席に余裕がございますのでどうぞお誘い合わせの上お越し下さい!) ブラーボさんとのデュオライヴはもう3回目になりますが、初めてお会いしたのはもう10年以上前かも知れません。 小松亮太さん(バンドネオン)、そしてつい先日共に作ったデュオアルバムをリリースしたばかりの西嶋徹さん(コントラバス)とのクアルテットで全国各地でコンサートを行いました。 何とYouTubeに大阪で行った10年前の演奏の動画がありました!(バンドネオンは早川純さん、コントラバスは田中伸司さんです。) それから暫くブランクがあり、昨年こちらからお声がけして久々の共演につながりました。 ブラーボさんは素晴らしいところはやはり音色の美しさと、そして響きのコントロールが巧みなところだと思います。 ブラーボさんとのデュオの為に僕も安いギターを買って下手なりに弾いたりしてみたのですが、ギターの魅力とは弾いた音そのものだけではなく、弾いた後の残響をどう処理するのかにもあったんですね! 弾いた後の残響を残しつつ次の音を弾くことによって、そこに音のレイヤーが生まれるのです。 特にブラーボさんのギターソロを聴いていてその美しさと面白さに気づきました。 こんなふうに気付かせてくれるブラーボさん、やはり凄い人です。 7/7はピアソラ作品『忘却』や定番『タンゴの歴史』の他、僕が編曲をさせて頂いた『カミニート』や『ロス・マレアドス』、『パロミータ・ブランカ』も演奏予定です。 タンゴの好きな方、ピアソラの好きな方、ギターファンの皆さん、きっとお楽しみ頂ける内容になると思います。 前回も前々回も大好評でしたので、是非お越し下さい! どうぞよろしくお願いします! 【7/7(日)喜多直毅(ヴァイオリン)レオナルド・ブラーボ(ギター)】 出演:喜多直毅(ヴァイオリン)    レオナルド・ブラーボ(ギター) 内容:アストル・ピアソラ作品、古典タンゴ、etc. 日時:2019年7月7日(日)14:00開場/15:00開演 会場

喜多直毅&西嶋徹アルバム『L'Seprit de L'ENKA』リリース!!!

イメージ
コントラバス奏者の西嶋徹さんと共に今年2月末に録音した『L'Seprit de L’ENKA』がリリースされました。 このアルバムはCDではなくハイレゾダウンロード配信ですがぜひ多くの方にお聞き頂きたい…、そんな作品です。 L' Esprit de l’ ENKA UNAMAS 喜多直毅(ヴァイオリン)西嶋徹(コントラバス) L' Esprit de l’ ENKA (試聴も可能です。) Naoki Kita, Toru Nishijima UNAMAS 2019/06/30 (P)2019 沢口音楽工房 (C)2019 沢口音楽工房 3,000円 収録曲: ・舟歌 ・赤い橋 ・アリラン ・悲しい酒 ・アカシアの雨がやむとき ・ソルヴェイグの歌 ・五木の子守歌 ・ふるさと アルバムタイトルは直訳すれば『演歌の精神』。 その名の通り、日本の演歌の名曲と演歌的な情念や『泣き』の込められた歌を収録しました。 八代亜紀さん、美空ひばりさん等、演歌の女王たちの代表曲や、70年代から長きにわたり日本のアンダーグラウンドシーンの女王として黒い輝きを放った浅川マキさんの名曲を、オリジナルアレンジで演奏しています。 また六曲目にはグリーグの名曲『ソルヴェイグの歌』をコントラバスソロで収録。 この曲目の中にあって異色のナンバーですが、西嶋さんの深みのある豊かな音色、そして歌心をたっぷりと味わっていただけると思います。 最近は様々なシンガーや演奏家が昭和歌謡のカバーを行っています。 昭和時代にはそれ程多くの名曲が存在したということでしょう。 今回のアルバムでもコンセプトとして昭和時代の歌を取り上げてはいますが、編曲を担当した僕としては『ヴァイオリンとコントラバスのアンサンブル』という点に重きを置きたかった。 即興演奏シーンでは決してヴァイオリンとコントラバスのアンサンブルは珍しいものではありません。 しかし『歌物』、しかも日本の演歌のカバー集としては、全く異色の、そしてチャレンジングな作品と言えるでしょう。 作品作りにあたっては、殊に西嶋さんの豊かな響きと、彼のソロアルバムで発見したノイズやエクスペリメンタルなサウンドを活かすようなものにしたいと思いました。 実は彼の新たな側面(エク