喜多直毅クアルテット4/28&29ライヴ『難民 Refugees』

約十年にわたって公演を重ねている喜多直毅クアルテット。
今回は『難民』と銘打って公演を行います。

盛んに報道されている様に、ウクライナでの戦争が始まって以来、多くの方々が戦禍を避け西側に旅立たちました。
いつ砲撃されるとも知れない故郷に家族や友人を残さざるを得ず、後ろ髪をひかれながら泣く泣く国境を渡った方も多かったと聞きます。
離別の悲しみ、絶望と不安、惨めさ、怒りと苛立ち…、彼らの内面にこうした感情の数々が溢れているのは想像に難くありません。

こうした報道に触れて思い出したのは、第二次対戦中のナチス収容所で過酷な日々を送りながら、それでも人生からの問いにポジティヴに応答し続けた精神科医のヴィクトール・フランクルのことでした。
彼の著書『それでも人生にイエスと言う』は余りにも有名ですが、過酷な試練の中にあっても人生に対して誠実であり続け、静かな希望の火を絶やさずにいられたら何とか生き延びられるのかも知れないと読書を終えて思いました。

難民の方々の胸にあるもの、そして試練の嵐に灯る静かな火。
これらを思い描いて音楽にし、日本の、東京の、渋谷のライヴハウスで是非皆さんの前で演奏させて頂きたいと思います。
我が国には幸いミサイルは飛んできませんが、社会の難民、共同体の難民は存外に多いように思うのです。
更に言えば心の難民、人生の難民もです。
この私も何かの難民かも知れません。
そして難民を作り出す存在、難民を拒む存在についても忘れてはいけないと思います。

二日間の公演を通して、国を棄て(或いは追われ)、別離を経て、いつか麗らかな春の日に再び故国の土を踏む…、そんな音楽ドラマを作りたいと思います。
ぜひお運び下さいますようお願いいたします。

喜多直毅クアルテット『難民 Refugees』~沈黙と咆哮の音楽ドラマ~

『難民 Refugees』~沈黙と咆哮の音楽ドラマ~

出演:喜多直毅クアルテット
   喜多直毅(ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   三枝伸太郎(ピアノ)
   田辺和弘(コントラバス)
内容:喜多直毅オリジナル作品

日時:2023年4月28日(金) 19:00開場/19:30開演/20:30終演予定
   2023年4月29日(土) 14:30開場/15:00開演/16:00終演予定
会場:公園通りクラシックス(渋谷)
   〒150-0042東京都渋谷区宇田川町19-5
   東京山手教会B1F
   03-6310-8871
   ※JR・東京メトロ・東急線・京王井の頭線渋谷駅下車徒歩8分

◉入場料:
・どちらか1日分のご予約¥4,500
・2日連続予約¥8,000(4月28日のご来場時に¥4,500、翌4月29日に¥3,500を申し受けます)
・当日(両日とも)¥5,000
●2日連続予約は4月28日(金)までにお願い致します
●4月28日(金)に翌日4月29日(土)のご予約を頂いた場合は¥4,500を申し受けます。

・メールでのお申し込み:violin@nkita.net(喜多)
 メールタイトルは「喜多クアルテット4月予約」、メール本文に「代表者氏名、人数、連絡先電話番号、ご予約希望の公演日付」を必ずご記入の上、お申し込みください。
・電話でのお申し込み Tel:03-6310-8871(公園通りクラシックス)
●小学生以下のお子様はご入場頂けない場合がございます。

泥をよけずに踏み固めるかのごとき直截さは、聴き手がふだん目を背けている深層心理を抉り出す。とりわけヴァイオリンを中心に、個々の楽器は前衛的な奏法を随所で前面に出すが、立ち現れる音はどれも本質を突く。感情の襞に真っ向から突き刺さる。ひとつの擦弦が、打鍵が、ピッツィカートが、刻々と意識の深化を誘発し、あたかも落下する砂時計の砂を直視するような臨場感。一音が含みもつ情景の多様さ―楽器の属性を飄々と飛び越え、自在に混ざり合いクラッシュしては、多面的に動く。トゥッティでのスタミナは驚異的だ。
文章:伏谷佳代
JazzTokyo #1196 「喜多直毅クァルテット/沈黙と咆哮の音楽ドラマ」(2022年2月4日・新宿ピットイン公演レビュー)より引用

【喜多直毅クアルテット】
2011年、ヴァイオリニスト喜多直毅によって結成された四重奏団。演奏される楽曲は全て喜多のオリジナル作品であり、その出自とも言うべきアルゼンチンタンゴからフリージャズ、即興演奏、現代音楽まで、様々な要素を呑み込んで再構築された、比類なき音楽である。濃厚な旋律と激しいリズムによって生み出される圧倒的な音楽劇は高い精神性を宿し、幅広い層からの支持を集める。
4人のメンバーはそれぞれの楽器における国内屈指のタンゴ奏者と目されつつ、卓越した実力により、ジャンルを超えてシーンの最先端で活躍している。この4人においてこそ実現する超絶なる表現が、聴衆の気魂を揺さぶり“ドゥエンデ(Duende)”を呼び醒ます。

喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)
1972年岩手県出身。国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲を、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、その独創性と精神性において高く評価されている。他に翠川敬基、黒田京子、齋藤徹等、国内を代表する即興演奏家との演奏と録音、また邦楽・韓国伝統音楽奏者・ダンサーとの共演も数多い。欧州での演奏も頻繁に行なっている。作家の高樹のぶ子の朗読舞台でも演奏と作曲を行なっている。ソングライターとしては上條恒彦に作品提供(敬称略)。

北村聡(バンドネオン)
関西大学在学中にバンドネオンに出合い小松亮太に師事、ブエノスアイレスではフリオ・パネのレッスンを受ける。世界各国のフェスティバルで演奏。これまでに鈴木大介、舘野泉、波多野睦美、夏木マリ、EGO-WRAPPIN'、川井郁子、中島ノブユキ、カルロス・アギーレ、東京交響楽団と共演。NHK「八重の桜」、映画「そこのみにて光輝く」をはじめ様々な録音に参加、繊細な表現には定評がある。ジャノタンゴ、三枝伸太郎Orquesta de la Esperanza、大柴拓カルテットなど数多くの楽団に参加、活動中。

三枝伸太郎(ピアノ)
1985年神奈川県出身。東京音楽大学大学院音楽科作曲専攻修了。アルゼンチンタンゴのピアニストとして 2008年よりバンドネオン奏者、小松亮太氏のコンサート・ツアー、レコーディングに参加。その後、タンゴのみならずジャズ、ポップス、ブラジル音楽など様々なジャンルで活躍。また、作曲家として、シンガーへの楽曲提供、映画音楽、舞台作品への作曲と演奏での参加など数多く手掛ける。近年は坂東玉三郎のコンサート音楽監督、劇作家・演出家点女優渡辺えりの舞台音楽、NHKBS8K「国宝へようこそ」音楽担当など。

田辺和弘(コントラバス)
クラシック、アルゼンチンタンゴ、即興演奏などで活動するベーシスト。在学中からタンゴと出会い、日本はもとよりアルゼンチンの若手からタンゴ全盛時代のミュージシャンとも多く共演している。故齋藤徹氏と出会い共演をきっかけに様々なジャンルでも即興的なアプローチを試みている。喜多直毅クアルテットやベーストリオThe Bass Collectiveの他、国内の様々なタンゴバンドに継続的に参加しつつ、ジャンルに関係なくその音楽自体の持つエネルギーを表現するべく模索、活動している。

フライヤーデザイン:山田真介

Jēkabs Kazaks (1895~1920)
"Bēgļi" (1917)

喜多直毅クアルテット
喜多直毅クアルテット
作曲・ヴァイオリン:喜多直毅、バンドネオン:北村聡
ピアノ:三枝伸太郎、コントラバス:田辺和弘

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