4/27はとてもスペシャルな公演!!!喜多直毅クアルテット+矢萩竜太郎(即興ダンス)

矢萩竜太郎(即興ダンス)、齋藤徹(コントラバス)との共演
矢萩竜太郎(即興ダンス)、齋藤徹(コントラバス)との共演

矢萩竜太郎さんをご存知ですか?
ここ数年、齋藤徹さん(cb)のパフォーマンスやワークショップにご参加の方にはもうお馴染みのダンサーだと思います。
彼は即興ダンサーとして活動中。
近年は東京だけではなく、地方や海外(ヨーロッパ)でも踊り、各地で絶賛を受けています。
僕はその場に居合わせなかったのですが、ドイツ・ヴッパタールの即興スタジオ“ORT”では彼のダンスを観て涙する人が大勢いたとのこと。

これまでドキュメンタリー映画監督の近藤真左典さんが竜太郎さんの活動をずっと記録していました。
海外遠征まで同行し、パフォーマンスだけではなくプライベートな映像も撮影していました。
先月、二作品めのドキュメンタリーが出来上がり、僕も試写会へ足を運びました。
映画では竜太郎さんの活動が時系列になっているのですが、映像が後半に行くに従って、そのダンスが如実にパワーアップして行くのです。
成長・進化・発展。
ドキュメンタリーの最後の方のダンスは神がかっており、無駄がなく、かつ自由で、ハッとさせられるものでした。

僕も彼とは何度も一緒に共演させて頂いています。
彼の本拠地のダンススペース“いずるば”にお邪魔した時は気軽に声をかけ合う仲間です。
初めての出会いは五、六年前だったでしょうか(いや、それ以前だったかも)。
齋藤徹さんの引き合わせで行われた竜太郎さんと山海塾の岩下徹さんとのパフォーマンスでした。
僕はダンスとの共演歴があまりなく、どのように演奏したら良いのか実はとても戸惑っていたのです。

ダンスとの共演に対する戸惑い以外に、もう一つ不安になることがありました。
それは竜太郎さんがダウン症だということです。
僕はダウン症の人とは接したことがなく、彼とどのようにコミュニケーションをとったら良いのか分からなかったのです。
普通に接したら良いのか、何か特別な接し方があるのか…。
とても戸惑っていました。

障がい。
それは色々あります。
ダウン症の他、自閉症や精神病。
身体の障がい。
加齢に伴って生ずるもの。
広く解釈すれば難治性の病気も入るかもしれない。

これらの人々と接するとき、どうしても身構えてしまう。
僕は特にそうなのです。
そもそも“普通の”人々と接する時でさえ、身構えてしまう。
バリアを張る、無視する、逃げる。
酷いもんですが、実際こんなふうにしてしまう。

その初めての共演の時も何だかギクシャクした感じで、僕はいたたまれなくなって楽屋の和室に逃げたのです。
そして一人、横になっていました。
すると竜太郎さんが入って来て僕の隣に寝転び、そして僕の手のひらに自分の手を差し入れて来たではありませんか。
これには驚きました。
僕の不安を察したのかな。
小さいけれどとても暖かい手でした。

それ以後、彼との距離は次第に縮まりました。
今では全く普通に接しています。

喜多直毅(ヴァイオリニスト)、矢萩竜太郎(ダンサー)、JeanSasportes(ダンサー) 2017年9月14日@いずるば
喜多直毅(ヴァイオリニスト)、矢萩竜太郎(ダンサー)、JeanSasportes(ダンサー)
2017年9月14日@いずるば

彼は本当に優しくて思いやりがあり、決して人を馬鹿にしたり虐めたりしない人です。
対して、我々“普通の人達”の間にはいかに多くの差別や虐めや競争があることか。
あれも出来る、これも出来ると言いながら、大切なことが出来ないのです。
これこそ障がいというべきものかも知れません。

竜太郎さんもそんな“普通の人達”の間で生きています。
バイトをしていて、そこでは一人の従業員として働いています。
様々なことがあるに違いありません。
差別や虐めや競争の溢れる社会の中、辛いこともきっとあるでしょう。
察するに竜太郎さんは傷つきやすい人だと思います。
でも彼から感じるのはポジティブで明るいエネルギーです。
それがダンスにも表れており、その力強く素直な動きには、人間が本来持つ生命力を感じさせられます。

障がい。
ひょっとしたら誰もが形や程度の差こそあれ、身体だけではなく、心にも生きづらさや上手く出来ないことを抱えているのではないかと思います。
そこに自覚がある人もいれば無い人もいる。
とにかく人間というものはコンパスで正確に描いた円ではなく、どこかしら歪みや欠けを持っているものだと思います。
または心に開いた深く暗い穴を持っている。
僕も人間的には相当歪んでおり、欠落した部分や闇のような穴を多く抱えています。
なので障がいは何もないくせに生きていくのが大変で、『自殺だけはしない』『何とか寿命まで持ちこたえる』だけを目標としています。
偉くなれなくても金持ちになれなくても、自動的にスイッチが切れるまでは何とか生きたいと思っています。

これまでこの歪みや欠落を音楽で描いて来ました。
穴に落ちてもがく人の姿や声を音にして来ました。
そんな一見忌わしい事を続けて来ましたが、意味も意義もある事だと信じています。
これは僕に与えられた仕事であり、役割だと思っているので今のところ止めようとは思いません。
特に喜多直毅クアルテットではそうした作品作りをして来ました。

喜多直毅クアルテット 喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)三枝伸太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス) 2017年10月22日@公園通りクラシックス
喜多直毅クアルテット
喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)三枝伸太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス)
2017年10月22日@公園通りクラシックス

今回、嬉しいことに喜多直毅クアルテットに竜太郎さんがゲスト参加してくれることになりました。
いつか僕の手のひらに手を差し込んでくれた時のように、彼の手が暗い穴や欠けたところに光と温度を与えてくれる気がします。

竜太郎さんのダンスがあんなに素晴らしいのはダウン症だからでしょうか?
元々の才能?
それとも人格?
きっとたゆまぬ努力もあるでしょう。
しかし僕には何とも言えません。
ただ彼が素晴らしいダンサーで、どんどん凄くなっていて、そして堪らないほどに魅力的な人だということは確実です。

先述のように、障がい者であっても無くても誰しも何かしら抱えている。
(それは相対的なものでは無く、本人にとって絶対的なものです。)
しかし輝くことは絶対に出来る。
もし何か不足や欠落した部分があっても、何かがそこを補う。
不思議なことですが、必ず何かがそこを補うと思います。
竜太郎さんを見ているとそんな事を考えさせられるのです。

4/27は本当にスペシャルな公演になります。
皆さん、ぜひぜひお越しください!


『喜多直毅クアルテット with 矢萩竜太郎』スペシャル公演
音と身体から迸る美しきエネルギー、その二つが出会う時、生まれいずる“場”。
喜多直毅クアルテット、活動開始以来初めてのゲスト参加公演!!!


2019年4月27日 喜多直毅クアルテット with 矢萩竜太郎 Sprcial Session @いずるば
2019年4月27日
喜多直毅クアルテット with 矢萩竜太郎 Sprcial Session
@いずるば

出演:喜多直毅クアルテット
   喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   三枝伸太郎(ピアノ)
   田辺和弘(コントラバス)

特別出演:矢萩竜太郎(ダンス)

内容:喜多直毅オリジナル作品+即興ダンス

日時:2019年4月27日(土)19:00開場/19:30開演
会場:いずるば(沼部・多摩川)
   東京都大田区田園調布本町38-8

料金:ご予約¥4,000/当日¥4,500
ご予約・お問い合わせ:violin@nkita.net

出演者プロフィール

【喜多直毅クアルテット】
2011年、ヴァイオリニスト喜多直毅によって結成された四重奏団。演奏される楽曲は全て喜多のオリジナル作品であり、その出自とも言うべきアルゼンチンタンゴからフリージャズ、即興演奏、現代音楽まで、様々な要素を呑み込んで再構築された、比類なき音楽である。ロシア音楽を彷彿とさせる濃厚な旋律と共に、日本の伝統音楽に通ずる“間”の感覚を併せ持った彼らの音楽は、その深い精神性を高く評価されている。
4人のメンバーはそれぞれの楽器における国内屈指のタンゴ奏者と目されつつ、卓越した実力により、ジャンルを超えてシーンの最先端で活躍している。この4人においてこそ実現する超絶なる表現が、聴衆の気魂を揺さぶり“ドゥエンデ(Duende)”を呼び醒ます。

【矢萩竜太郎 即興ダンス】
ダンスのスタイルは常に“即興”。かたちに捉われない自分自身の表現を目指し、彼の存在がその場に与えるポジティブな影響は多方面で注目されている。
2014年夏、日本で6回、ドイツで4回の公演を齋藤徹、ジャン・サスポータスと共に成功させる 。
全10回の公演をドキュメンタリー「ダンスとであって・竜太郎10番勝負!」として発表(近藤真左典監督)。

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