シャコンヌ


この所、凄く忙しかったです。
12/24にバッハのシャコンヌを演奏しなければならず、朝から晩までヴァイオリンを弾いたり巨匠達の録音を聴き比べたり…。
大変でしたが充実の日々でした。

12/23は京谷弘司さん(バンドネオン)の仕事で甲府へ。
久しぶりのアルゼンチンタンゴ。

京谷弘司, 喜多直毅

会場は音大生時代に婚礼のBGMの仕事で頻繁に行ったホテルでした。
いやぁ、懐かしい。
当時、自分がプロになり同じ会場でタンゴを演奏しているとは想像だにしませんでした。
でもそうなりたいと思う気持ちはどこかにありました。
思いは叶うのかも知れません。

ちなみにこの日に使用したマイクは…
DPA VO4099V コンデンサーマイク バイオリン用/DPA
¥価格不明
Amazon.co.jp
今までヴァイオリン用に買ったものの中で一番良いかも知れません(ちょっと高音多め)。
写真から分かる様にヴァイオリンのボディ側面だけをちょっと挟む感じ。
楽器の振動を妨げない様に設計されています。

さて楽屋でもステージでもシャコンヌを練習。
ちょっと弾けて来たかなと思って、最初から弾き始めると同じ箇所で躓いたり…。

喜多直毅

夜は宿泊先のホテルで弱音器を付けて練習。
この弱音器はまさに練習の為のもので一番消音効果が高いそうなのですが、それでも隣室に音が漏れるのが気になり余り集中出来ませんでした。
こんな時の為にやはりサイレントヴァイオリンが必要かも知れません。

ちなみにこのホテルには思いがけず掛け流しの天然温泉がありました。
ビジホだけど。
温泉にゆっくり浸かったおかげで練習の疲れが大分取れました。

翌日は代々木の松本弦楽器の練習室を借りて最後の追い込み。
四時間みっちり。
今夜が本番だと言うのに、それでも弾けない箇所が幾つもある…。
手や腕の形がそもそも向いていないのでは?とさえ思ってしまいましたが、会場に向かう一時間前には何とか様になりました。

この日のコンサートはさとうじゅんこさん(うた)が主役をつとめるもの。
出演者は他に齋藤徹さん(コントラバス)、矢作竜太郎さん(ダンス)、熊坂路津子さん(通称:るっちゃん)、そして僕。
演奏曲はバロック音楽、プーランク、クルト・ワイル、ピアソラ、徹さんのオリジナル曲、詩の朗読と即興等、本当にヴァラエティに富んでいます。

シャコンヌはその中の一曲なのですが、ヴァイオリン独奏ではなくじゅんこさんの(うた)と徹さんのコントラバスが加わった三重奏です。
しかしヴァイオリンのパートは独奏で弾かれるものと全く同じ。
なので僕が責任を持ってしっかり弾かないと、他の二人に迷惑をかけてしまう。
独奏で間違うのなら、自分が崩壊するだけなのですが…。

いよいよ本番。

う~む…。
まず最初のレ・ファ・ラの和音から『しまった!』と思いました。
イメージしていた音と違う音を出した。
緊張の余り、身体が硬くなってコントロールが効かない。
途中のアルペジオでは音程が怪しくなり、D-durの後半部分では更に調子っぱずれになってしまった。
しかも音が汚い…。
最後のA-mollのAの開放弦と三度の重音が交互に下降していく部分も思った様に行かず…。
テンポ的に相当安全運転をした積りなのですが。

と言うわけで、頭の中がカオス状態のまま、シャコンヌは終わったのでした。

あーーー、悔しい。

実はシャコンヌをちゃんと人前で演奏するのはこれで二度目なのです。
一回目の演奏ではテンポ設定が甘かったせいで途中で崩壊してしまい、結果、凄く汚い音楽になってしまいました。
お客さんにも申し訳ないし、自分自身、かなり落ち込みました。
それがずっとトラウマになっていたのです。

しかし前回のシャコンヌから比べたら今回のはかなり進歩していたと思います。
いくら一人自宅でシコシコ練習して上手に弾けていても、やっぱり人前での演奏を重ねないと本当に弾ける様になったとは言えません。
緊張感と言う負荷のかかった状態でどれ程のパフォーマンスが出来るか…。
やっぱりそれが大事なのかな。

終演後、聴きに来てくれていた松本弦楽器の親方と話したのですが、『喜多直毅のバッハだった』と言ってくれました…。
良い意味に捉えたいと思います。
そして喜多クァルテットでコントラバスを弾いてくれている田辺和弘君も、『面白かった(笑)』と言ってくれました。
彼の意見も良い意味に捉えよう…。

この機会がなかったらこんなに練習をしなかったと思うし、名演奏家達の演奏や解釈を勉強したりしませんでした。
本番でミスを重ねて恥をかくと直後はとても落ち込むのですが、初心に帰る事が出来ます。
『俺って下手だな』と思う気持ちと『でも上手くなりたい』と思う気持ち、自分の中に二つ併せ持っていたいと思います。

と言う訳で、ちょっと悔しい演奏になってしまったシャコンヌですが、また頑張りたいと思います!
まさにヴァイオリニストの聖書。
音楽的にも技術的にも難しいけれど取り組みがいがある。
厳しくて取っ付きにくいけれど、こちらが真摯な姿勢で向かえば必ず応えてくれる。
一生弾き続けたい曲です。

実は次回の演奏は既に決まっており、春先の予定。
※このトリオにダンスのJean Sasportesさんが参加して下さるかも???
是非聴きにいらして下さい!

あ、自分のシャコンヌの事ばかり書いてしまいましたが、他のプログラムは素晴らしかったです!
さとうじゅんこさんとダンスの矢萩竜太郎君のペアは最強だなと思いました。
第二部では彼らから光り輝くオーラが出ていました。
それとるっちゃんと竜ちゃんの即興も実に見事でした!!!

と言うわけで24日のクリスマスイヴ、とても楽しく終了。
終演後は皆んなでケーキを食べました。
写真はじゅんこさん、竜太郎くん、俺。

喜多直毅, さとうじゅんこ, 矢萩竜太郎

年内、僕はあと一つコンサートが残っています。
黒田京子さん(pf)とのデュオで雑司が谷のエル・チョクロと言うライヴハウスで演奏します。
こちらは既に満席となりましたので予約受付は打ち切らせて頂きましたが、キャンセル待ちのご予約は受け付けております。

そして来年1/29!
大事なコンサートが控えております!
僕が持てる全てのエネルギーを注ぎ込んでいる喜多直毅クァルテット。
そのコンサートです。
まだお席に余裕がございます。
是非聴きにいらして下さい!

喜多直毅クアルテット・コンサート2015

出演:喜多直毅(音楽と構成、ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   三枝伸太郎(ピアノ)
   田辺和弘(コントラバス)

日時:2015年1月29日(木) 19:00開場 19:30開演
場所:東京オペラシティ・リサイタルホール (東京・初台)
   東京都新宿区西新宿3-20-2
   03-5353-0788
料金:前売り¥3,500 当日¥4,000
予約:03-5353-9999(東京オペラシティチケットセンター)
   e+(イープラス) 
   メンバーからも入手可能。
主催・企画制作:株式会社ソングエクス・ジャズ /pianohouse.mmg
協賛:shin-ichi tokunaga
総合お問い合わせ:
   株式会社ソングエクス・ジャズ 
   03-3257-3404、info@songxjazz.com

喜多直毅クアルテット, 小島一郎