2021年2月20日土曜日

2/26喜多直毅クアルテット『池袋ネガフィルム』:都市(まち)の心を描きたい。

喜多直毅クアルテット
喜多直毅クアルテット
喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)
三枝慎太郎(ピアノ)田辺和弘(コントラバス)
2020年1月24日@公園通りクラシックス(東京)

都市(まち)は人の集合体。都市は思い、考える。

今でこそ若者の間で『東京・住みたい街』ランキングの上位に吉祥寺と並んでその名が上がる池袋。
デパートが二つもあり、ちょっと路地に入ればお洒落なカフェやレストラン。
かつて文士の暮らした洋館、大学には蔦の絡まるチャペル、少し歩くと懐かしさ漂う雑司ヶ谷や鬼子母神の界隈…。

しかし数十年前まではちょっと暗くて怖くていかがわしい雰囲気の漂う街でした。
新宿や渋谷や銀座など東京の主な繁華街の中、上野と同様にいつまでも戦後とか昭和が抜け切らず、それが一種の『垢抜けなさ』を醸し出していたのかも知れません。
しかしそこが強烈な魅力でもありました。

池袋東口を背にして真っ直ぐ歩く。
すると東池袋のあたりにはボロボロの住宅やアパートが立ち並んでいました。
バラックのような長屋もあったと記憶しています。
平成を迎えた、僕が大学生の頃です。
その街並みはもう一部分を残してほぼ消滅してしまいました。

昔、『巣鴨の母』という映画を見ました。
戦犯容疑をかけられた息子とその老母の物語です。
老母が巣鴨拘置所(現在のサンシャイン池袋)へとぼとぼと歩いて行くシーンがあり、大変印象に残っています。
そこは荒涼とした埃っぽい道。
今の池袋からは想像も出来ません。
実際、戦犯として捉えられた家族・友人・恋人に会うために、何人もの人があの風景の中を歩いたのだと思います。

池袋に限らず、都市というものはどんどん変わっていきます。
しかしここで順序を逆に考えてみたい。
都市が変わったのではなく、人々が変わったのだと。
人々の考え方、生き方、行動が変化して、都市の様子が変わった。
至極当然、何を今更。
当たり前と言えば当たり前ですが、僕にとっては何だか新鮮な発想の順序でした。

では、池袋という都市は、人々の生き様やその移り変わりをどのように見て考えて来たのか。
人々の変化に何を思い感じて来たのだろうか。
そのような問いが新たに生まれました。

その問いに一つの答えを見つけるために、喜多クアルテットの音楽を用いたいと思います。
これまでこのグループでは、潮流というものに流されず、社会や人間のテーマを内包する音楽作りを貫いて来ました。
フランスのシャンソンには『現実派シャンソン chanteuses réalistes』というカテゴリーがあるそうですが、喜多クアルテットの音楽も無理矢理そこに入れさせて頂きたいと思います。
生きるための格闘、善悪の境界、暗い熱情、彷徨者。
そういったものを音楽を通して描いて来ましたが、今回も戦後の巷の『熱を帯びた灰色』のイメージにフィットする音楽が出来るのではないかと思っています。
それがまさに池袋が見つめてきた人々の姿でもあるはずです。

現代の華やかな池袋を皆さん、ご存知です。
『住みたい街ランキング』のトップにも輝く池袋。
そこに喜多クアルテットの音楽を響かせてみたい。

立ち現れるものは?

若者たちがショッピングを楽しむ通りにはかつて闇市が立ち並び、生きることに必死の人たちが押し合いへし合いしていた。
デートの待ち合わせをしている駅の階段。
そこには戦災孤児や傷痍軍人が虚な眼をして座り込んでいた。
勤め帰りのサラリーマン達が向かう風俗街には、かつて街灯の下たたずむ未亡人達がいた。
昔、春をひさぐ女たちは『こんな女に誰がした』と歌いました。
現代の女性達は何と歌うでしょう。

お越しの皆さんが今回の演奏を聴いて、脳裏に現代の池袋の上に戦後昭和の池袋をセロファンのように重ねて下さると幸いです。
そして歳月の中、行き交う人々と彼・彼女を見守り続ける“都市の心”を思いめぐらせていただければ大変嬉しく思います。
過去と現在を思うとき、必然的に未来も想像できると思います。
コロナ禍ですっかり様変わりした現代の日本社会。
その中でこの公演を行うことにも、また一つの意義があるように感じてなりません。

皆さん、2/26はどうぞ池袋へお越しください!

喜多直毅クアルテット『池袋ネガフィルム』 ~戦後昭和の残像~ オリジナルタンゴで描く都市(まち)のカオスと孤独
喜多直毅クアルテット『池袋ネガフィルム』 ~戦後昭和の残像~
オリジナルタンゴで描く都市(まち)のカオスと孤独
2021年2月26日
としま区民センター


喜多直毅クアルテット
『池袋ネガフィルム』 ~戦後昭和の残像~ 
オリジナルタンゴで描く都市(まち)のカオスと孤独

出演:喜多直毅(作曲・ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   三枝伸太郎(ピアノ)
   田辺和弘(コントラバス)
内容:タンゴを土台としたオリジナル楽曲

日時:2021年2月26日(金) 18:00開場/18:30開演/19:45頃終演予定
   〒170-0013東京都豊島区東池袋1-20-10
   JR線・東京メトロ・西武池袋線・東武東上線「池袋駅」東口32番出口より徒歩7分

料金:予約/当日共に¥4,000


◉オンライン予約/支払/受取方法

* 公演のご案内画面にある「チケット取扱い」をご参照ください。
◎支払・受取方法
1. クレジットにて支払い後、当日公演会場のチケット窓口、またはセブン-イレブンにてお引取り。
2. セブン-イレブンにて支払い、お受け取り。
3. としまチケットセンターにてお支払い、お受け取り。
※ セブン-イレブンでの支払/受取には別途手数料が発生します。

◉電話予約
としまチケットセンター 0570-056-777 (10時から17時 臨時休業あり)
* 電話予約のお客様は、としまチケットセンター、またはセブン-イレブンにてお支払い、お受け取りとなります。

◉チケット取り扱い窓口のご案内
としまチケットセンター(としま区民センター内)
・1F としまチケットセンター
・3F としま区民センター窓口
・4F 財団事務所

企画制作:雑司ヶ谷TANGO BAR エル・チョクロ
主催:公益財団法人としま未来文化財団 
共催:豊島区

◉チケット取り扱い窓口のご案内
としまチケットセンター(としま区民センター1F)
10:00~19:00・臨時休業あり
 
企画制作:雑司ヶ谷TANGO BAR エル・チョクロ
主催:公益財団法人としま未来文化財団 
共催:豊島区

【公演に関するお問い合わせ】
◎雑司ヶ谷TANGO BAR エル・チョクロ 
TEL: 090-7739-0777
◎としま未来文化財団 事業企画グループ 
TEL: 03-3590-7118(平日10:00~17:00)

2021年1月27日水曜日

2/2(火)はviolin喜多直毅/cello翠川敬基/contrabass西嶋徹による即興弦楽トリオ。

 年が開けてまだまだ一月…と思っていたらもう二月も直ぐそこ。

もう少し一月にやるべきことがあった気がしますが、コロナコロナの毎日で忘れてしまいました。

それにしても自民党政府に対しては腹が立つばかり。
主にTwitterやYouTubeでニュースを見ているのですが、菅・麻生・二階のトリオは本当に酷いと思っています。

実は先日チョコレートを食べていたらいきなり奥歯が折れたのです。
最初は詰め物が取れたのかと思いました。
歯医者に行って診てもらったら、詰め物が取れたのではなく折れていると言われました。
折れた原因は“歯軋り”だそうです。
当たり前だけど、歯軋りなんて寝てる最中の行いですから、全く無意識に歯を食いしばっているわけです。
でもこの歯軋りきっと自民党政権に対する怒りが原因だと思っています。

さて菅・麻生・二階は悪いトリオですが、今日は良いトリオのライヴのお知らせ。

2/2(火)、西荻窪・音や金時にてチェロの翠川敬基さん、コントラバスの西嶋徹さんと三人で即興演奏のライヴをおこないます。
お二方とはヴァイオリン+チェロ、ヴァイオリン+コントラバスというデュオで演奏を重ねて来ました。
共に擦弦楽器にデュオですが、同属楽器の魅力がたっぷりです。
そして翠川さん、西嶋さんの素晴らしい表現力に支えられ、小さな楽器・ヴァイオリンも歓び囀ると言った感じ。

ヨーロッパでは割と良く聴くことの出来る即興弦楽アンサンブル。
正確無比な技術と楽器の可能性を究極まで追求した演奏。
僕が知っている欧州のアンサンブルは、まさにそんな印象です。

しかしこのトリオでは全く違った音楽が生まれると思っています。
そうでなければやる意味がない。
響き合う弦の豊穣さを味わいに是非お越しください!

出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
   翠川敬基(チェロ)
   西嶋徹(コントラバス)
内容:即興演奏

日時:2021年2月2日(火)17:30開場/18:00開演
会場:音や金時(西荻窪)
   東京都杉並区西荻北2-2-14喜志コーポB1
   03-5382-2020

料金:¥2,700+オーダー(飲み物)※フードの提供はございません。
※15名様限定です。お申し込みの際は《代表者氏名》《人数》《連絡先電話番号》を必ずお書き下さい。



2021年1月25日月曜日

1/30(土)は金宜伸さん(ダンス)立岩潤三さん(パーカッション)と即興パフォーマンス@Cafe MURIWUI

Trikord
Trikord:
金宜伸(ダンス)喜多直毅(ヴァイオリン)立岩潤三(パーカッション)

皆さん、こんばんは。

東京は寒い日が何日か続きました。
お住まいの地域はいかがでしょうか?
今年は北陸を中心に大雪のところが多いですよね。
僕も北国生まれですが、子供の頃はカマクラを作って遊んだりミニスキーを履いて学校に行ったのを思い出します。
温暖化のせいで故郷も雪が少なくなり、今はただの寒いだけの場所。

さて1/30(土)はTrikordというグループで即興パフォーマンスを行います。
会場は祖師ヶ谷大蔵のCafe MURIWUI。
メンバーはダンスの金宜伸さん、パーカッションの立岩潤三さん、そして僕(ヴァイオリン)です。



TrikordのPVです。
一番最後の告知は昨年のものです。
ご注意ください!

さて、もう遠い昔のことのように感じられますが、一時期ベリーダンスの伴奏の仕事を良くやっていました。
ライヴハウスやクラブっぽいところ、カフェ、バーなどで。
そんな仕事で出会ったのが金さんと立岩さん。
金さんはベリーダンスが出自ですが、自身のルーツとも言える韓国伝統舞踊の動きも活かした表現を追求しています。
立岩さんは本当に守備範囲が広く、プログレ、インド音楽、アラブ音楽、ヨーロッパの中世の音楽等々、様々なフィールドでその才能を活かしていらっしゃいます。

僕はもうベリーダンスの仕事をすることもなくなり、そういった現場で金さんや立岩さんとご一緒する機会はありません。
アラブ音楽の演奏も一年に一回、毎年恒例の年末のファルハのライヴくらいです。
(ファルハ=ウード奏者の常味裕司さんの楽団)

しかし何だか金さんと立岩さんとはもう十年くらい不定期でTrikordをやっています。
十年と言っても年一回のペースなのですが…。
久しぶりに会うとお互いの変化が分かって面白いし、変化していなくてもそれはそれで面白い。
とにかくステージでは三人三様の立ち位置で即興パフォーマンスを繰り広げます。

このトリオでは僕は殆どアラブ的なことは弾きません(弾けない)。
でもいつもの自分でいても全く違和感がないし、他の二人もアラブ音楽が!とかオリエンタルダンス(ベリーダンスのこと)が!という人たちでもない。
『こうでなきゃだめ』ってのがない。
何だかボーダーのない砂漠を自由に漂っているようで面白いです。

思えば東京の音楽シーンは縦割りで、村と村の繋がりが希薄。
案外お客さんもそういう傾向があったりする。
それはそれで良いのです。
そっちの方が面白いことだってある。

でもたまに漂ってみると自分が絶対こうだと思っていることが決して絶対ではないし、ただ国境を超えても変わらぬ価値観があると分かったり、知らないことを憶えたりする。
これは一昨年からデュオをやり始めたピアノの照内央晴さんとの関係にも言えること。
(とても良いデュオに育っています。)

そんなわけで、1/30はぜひTrikordのパフォーマンスへお越しください!
コロナ感染拡大防止対策として窓を開け放って公演を行うかも知れません。
ぜひ暖かい服装でお出かけください。
お待ちしています!

出演:Trikord
   キムウイシン(dance)
   喜多直毅(violin)
   立岩潤三(percussion)
内容:即興パフォーマンス

日時:2021年1月30日(土)17:30開場/18:00開演
会場:カフェムリウイ(祖師谷大蔵)
   東京都世田谷区祖師谷4-1-22-3F

料金:ご予約のみ¥3,500+1drink order(限定15名)
予約:violin@nkita.net(喜多)
※メールタイトルは「トリコルド」、メール本文に《代表者氏名》《人数》《連絡先電話番号》を必ずご記入の上、お申し込み下さい。

<コロナ対策について>
本公演では感染防止対策として換気、会場入り口での手指の消毒、検温を実施いたします。感染の状況によってはやむを得ず公演を中止する場合があります。また、お客様にはマスクの着用や咳エチケット等にご協力いただきますよう、お願い申し上げます。

2021年1月15日金曜日

1/22来週金曜日は黒田京子さんとデュオ@中野SweetRain

 皆さん、こんばんは。

毎日毎日寒いですね。
コロナ感染も日毎に患者さんが増えて大変です。
僕は去年の正月に高熱を出し酷い目にあいました。
今から思えばあれはコロナだったのでは?と思っているのですが…。
あの苦しさ、そして全身の痛みは強烈なもので、入院こそしませんでしたが『俺、もう死ぬかも』と思いました。
コロナも非常に高い熱が出ますよね。
同じような症状で苦しんでいる方には早く良くなって欲しいと祈るばかりです。

さて1/22来週金曜日は黒田京子さんと中野のSweetRainでライヴを行います。
緊急事態宣言発令に伴い、開場開演時間を通常より繰り上げてお届けします。
20:00前には終了いたします。

出演:喜多直毅(violin)
   黒田京子(piano)
内容:オリジナル等を即興演奏を交えて

日時:2021年1月22日(金)17:30開場/18:00開演/19:45終演
   ※緊急事態宣言発令に伴い、開場開演時間が変更になりました。
場所:Sweet Rain(中野)
   東京都中野区中野5-46-5 岡田ビルB1
   03-6454-0817

料金:2,800円(学割¥1,800)
ご予約・お問い合わせ:
   03-6454-0817

★3密を避けるため、当分の間お客様の人数を10人程度限定にさせていただきます。
そのため、メールでのご予約をお願いいたします。定員に達した場合、お断りすることもあり
ますが、どうかご了承ください。
★必ずマスク着用の上ご来店くださるようお願いいたします。
★ライブチャージのある日は、2ドリンク以上のオーダーをお願いいたします。
★学割を利用される方は、来店時に学生証を呈示してください。呈示なき場合は適用できませんので、ご注意ください。但し、適用できる年齢は25歳以下とさせていただきます。
★上記の価格に消費税をプラスさせていただきます。

さてSNSではお伝えしていましたが、このデュオの2ndAlbum『愛の讃歌 -Hymne a l'amour-』(2014年リリース)がApple MusicSpotifyでお聴きいただけるようになりました。
在庫がなくなって以来、再プレスを希望される声をたくさん頂いておりました。
CDではなく配信という形ではありますが、これを機会にぜひ皆様にお聴き頂きたいと思っています!


【作品詳細】
愛の讃歌 ~Hymne à l’amour~
喜多直毅&黒田京子デュオ
ORTM-0001

フリージャズ、アルゼンチンタンゴ、即興演奏を経た喜多直毅(ヴァイオリン)と黒田京子(ピアノ)による待望のポピュラー音楽集。誰もが知る映画音楽やシャンソン、昭和歌謡の数々を収録。楽曲の奥底に流れる心情を余す所なく伝える二人の演奏。ヴァイオリンは情趣に富んで歌い、ピアノは色彩豊かに情景を描く。そして漆黒の音塊と痛切なノイズは心に強烈に突き刺ささる。楽器本来の音色はもとより、更なる響きの可能性を追求し続ける二人ならではのアプローチだ。それぞれの楽器の愛好者にも是非推薦したい作品である。また大胆な編曲とインプロヴィゼイションによって、音楽はよりドラマティックに展開して行く。抽象的なサウンドの中から語りかける声や美しい旋律、軋む音が立ち現われる時、聴き手はその想像力を大いに刺激されるだろう。
決して一筋縄ではないポピュラー音楽集だが、様々な人生、いつか見た風景、遠い記憶が呼びさまされる様な、深い時間を持つ事の出来るアルバムだ。
出会いと別れ、涙と笑いに彩られた物語。その全ての主人公達に贈る一枚。

1. 枯葉 Les Feuilles Mortes ジョゼフ・コズマ Joseph Kosma 7:58
2. 黄昏のビギン Tasogare no Beguine 中村八大 Hachidai Nakamura 4:50
3. 雨のブルース Ame no Blues 服部良一 Ryoichi Hattori 4:45
4. 他人の顔 The Face of Another 武満徹 Toru Takemitsu 2:50
5. 遠くへ行きたい Toku e Ikitai 中村八大 Hachidai Nakamura 7:45
6. ジェルソミーナ Gelsomina ニーノ・ロータ Nino Rota 1:32
7. シェルブールの雨傘 Les Parapluies de Cherbourg ミシェル・ルグラン Michel Legrand 3:29
8. ラストタンゴ・イン・パリ Last Tango in Paris ガトー・バルビエリ Gato Barbieri 4:08
9. ひまわり Love Theme from Sunflower ヘンリー・マンシーニ Henry Mancini 4:33
10. 愛の讃歌 Hymne a l’amour マルグリット・モノー Marguerite Monnot 8:49
11. おもいでの夏 The Summer Knows ミシェル・ルグラン Michel Legrand 2:55

是非聴いてみてね!

2021年1月11日月曜日

誰と勝負する?

 皆さん、こんにちは。

またしても!
緊急事態宣言が出て、本当に大変な世の中です。
現政権をどう表現しよう?
仁も義もない徳もない、そして美学のない政権。
毎日Twitterやニュースアプリでニュースを見ていますが、腹が立つやら情けないやら。
精神的にあまり良くないのでニュースのチェックを控えたほうが良いのかなとも思っています。

こんな時代にあって、演奏家もその生き方を問われていると感じています。
僕には『演奏家仲間』と呼べる人が余りいません。
何でそうなったかは本題から逸れるので申し上げませんが、でもとにかく皆んなには頑張っていて欲しいなぁと心から思っています。
直接メッセージを送るわけでもないし、ましてや面と向かって言うなんて照れ臭くて無理。
でも心底、負けないで欲しいと願っています。
こんなことを言うからには僕だって負けてはいられません!

こんなふうに思っていたところ、ある方のFBに気になる投稿がありました。
それはただの愚痴なのか、あるいは切羽詰まった悩みなのか、読んだだけでははかりかねるものでした。
ご本人はそこに愚痴めいたことを書き記したことによって気持ちも晴れて、案外ケロッとしてらっしゃるかも知れません。
それならそれで良いのです。

ただ内容を読めば自分自身にも思い当たるところがある。
だからその書き込みに対するアンサーではないけど、僕の考えを書いてみたくなりました。
ひょっとしたらその方の意図したところから大きく逸れるかも知れませんが、そこはご容赦いただければと思います。
ここに書くことは全く僕の個人的な考えですので。

その投稿に書かれていたこと。
それは『勝ち負け』でした。

他の同業者のように仕事が速くない、稼ぎが少ない、という悩み。
そして焦り、さらには無力感。
自分には勝つことなんて出来ない。
それは言い換えれば『自分は負けている』『もう諦めたい』でした。

その方の現在の環境を想像するに、負けてもいられないし、諦めてもいられないのではないかと思います。

その方は、僕みたいに独身で、東京でフラフラしていて、貧しくてもとりあえず餓死しなければ良いと考えていられる立場ではない。
(はっきり言って僕自身は飢えて孤独死しても仕方のない存在だと思っています。)
こんなちゃらんぽらんな人間には、現実の厳しさに今まさに直面している人の気持ちなんて、全く分からないのかも知れない。

子育て、住宅ローン、税金。
このコロナで次々と仕事はキャンセルになり、みるみる収入は減っていく。
政府はフリーランサーに対して、まったく給付金を出す気配もない。
自分のスキルはまだまだ未熟で他の人には追いつけず、思ったほどの収入にはならない。
…とくれば、焦るなというほうが間違っていると思います。
いくらちゃらんぽらんな僕でもそのくらいは想像できます。

確かにこの厳しい時代の中、勝っていくことは必要。
同業者や商売敵にアイディアや技術や仕事のスピードで勝ち、より良い収入を得て家族を守っていかなければならない。
『生き残る』イコール『勝つ』であり、それはこの世の鉄則です。
何の仕事でもそうだと思います。

スキルが未熟なら磨くしかない。
アイディアを得るためには勉強したり研究したり、頭を使わなければならない。

ヨーロッパのミュージシャンは良い仕事を獲得することに関してはまさに狩猟民族で、そのたくましさには驚かされます。
ロジャー・ターナーが言っていました、『これはハンティングだ』って。
そして僕の動画作りが『遅い遅い!』『まだ出来ないのか?』と言ってこぼすのでした。

ちょっと脱線しましたが、仕事を得ていくためにはライバルの動向を常に意識している必要もある。
ビジネスってそういうものだろうと思います。

しかし長い目で見た時に、勝ち負けだけで仕事をしていると、否、もっと人生というものを俯瞰した時、勝ち負けを尺度に生きていると必ず苦しくなる。
音楽家の場合、そうです。

案外良い作品は出来るかも知れない。
名声を得られるかも知れない。
富を築けるかも知れない。
でもきっと心は渇いて、荒れ果てる。
永遠に勝ち負け地獄に陥るからです。

他人と自分を比較して勝つことがモチベーションとなり、良い仕事が出来ることもあるでしょう。
負けた悔しさがバネになるかも知れない。
でも度が過ぎたり、目標が勝ち負けだけになると本当に悲惨です。

何を隠そうこの僕がそうでした。

負ければ相手を妬む。
勝てば相手を見下し高慢になる。
他人との勝ち負けや比較を人生の尺度にしている限り、そして他人より秀でることを目標にしている限り、この永遠ループの中にいなくてはならない。
永遠ループの中で心が曲がって行き、挙げ句の果てに周囲の人はこの『匂い』を感じてどんどん離れて行きます。
こうして心の中に地獄が生まれる。

そんな心を携えて彷徨った結果、他人と自分を比べるところから全ての不幸がうまれると僕は気がつきました。

しかし気がついただけでこの心の傾向が治るわけではない。
実は少しも治らず、相変わらず持て余しています。
一日に何度も勝っただの負けただのと考えている。
本当に自分が嫌になる。

でも最近こう思うようになりました。
他人が気になる時や勝ち負けが気になる時、妬ましく思う時、それは自分の仕事に打ち込んでいない時だと。
自分が今やるべきことからいつのまにか意識が逸れている。
人との比較の永遠ループから脱するためには、自分の世界を創っていくことに集中するのが得策。
その間は不思議と誰のことも気にならず、落ち着いた気持ちで練習したり創作に打ち込める。

この気づきは一つの救いとなりました。

もちろん時に比べる心は頭をもたげる。
だからもう自分はそういう人間なんだと諦めることにしました。
この苦しみはおそらく一生続く。
であれば、一生かけて作曲だの練習を続ければ良い、この苦さが心に広がる限り。
誰かより良い作品をつくって勝つよりも、自分で自分のスキルや創造性に目を向けて、それに磨きをかけるほうが何倍も有意義です。
そしてそれだけを目標にする。

結局、人生は自己満足で良いのだと思います。
自分と戦って勝てば良い。
負けたらもう一度挑めば良い。

世の中は意地悪なもので、競わせたがり争わせたがる。
実は勝者よりも敗者を見て面白がっているのじゃないかと思うほど。
でもそこに絡め取られてはダメです。

自分相手の競争、自分相手の勝負、どれほど清々しい気持ちでいられることか。
自分自身は最大のライバルであると同時に、仲間であり、味方だからです。

投稿をした方はおそらくちょっとした愚痴のつもりで気持ちを文章にしたのかも知れません。
まさか僕がその方の記事を読んで、勝手にこんな文章を書いているとは知るよしもないでしょう。
でももしかしたら偶然目に止まって読んで下さるかも?
もしかしたら僕がとんちんかんなことを書いているなと一笑に付されるかも知れないですね…。

それでも。
コロナで色々と大変なのは分かります。
実は僕も辛いのです。
政府の馬鹿野郎、給付金払いやがれと思っています。

でも…、良い音楽を作りたいじゃないですか。
頑張ろうぜ!

岩手の雑煮