いよいよ明後日はヴァイオリンソロリサイタル!!! 石川啄木と永山則夫。

マドリッドから帰って来ました。
スイス人ミュージシャン二人との即興演奏(フリージャズっぽい)を行いましたが、演奏時以外は殆どホテルの部屋にいて仕事をしていました。
結局フラメンコは観られず、市内観光もしませんでした。

今回のソロリサイタルでは喜多クアルテットの為に作った曲をヴァイオリン一本で演奏します。
もう編曲は終わり今練習をしている最中ですが、いやぁ大変なこと大変なこと!
いつもメロディだけ歌っていれば良かったのに、やることが一度に増えてしまいました。
まるで一人暮らしを始めたばかりの学生みたいです。

今まで全部親にやってもらっていたこと、例えば
・三度の食事の支度
・掃除
・洗濯
・ペットの世話
・日用品の買い物
・光熱費の支払い
…等々を全部一人でやらなければならない。
学校の勉強もサークル活動もバイトもあるのに!
ホント、親の有り難みが良く分かりました(親元にいる人が羨ましい)。
普段一緒に演奏してくれているメンバーには感謝しかありません。

今回のヴァイオリンソロ用の編曲で一番大変なのはやっぱり和音の処理です。
メロディだけ弾いて何とか和音進行をサジェスト出来る箇所もある。
全く和音を提示しなくて良い部分もあって、そういう箇所は気が楽です。

ところが!
旋律によってはどうしても対位法的な力学が働く場合があって、これに忠実に編曲を行うとバッハのヴァイオリン無伴奏曲の様になり本当に難しくなってしまう。
嫌です、自分の曲を難しくするのは。
なので余り極端に難易度の高い編曲は施さない様にしているのですが、それでもまだ弾けないところがある。
あああああ。

でも今回のコンサートでやりたいことは超絶技巧を披露することではありません。
聴く人を“世界”にお招きすることです。
では何の世界か???

それはやっぱり東北生まれのこの二人から立ち現れる世界です。
先日長浜奈津子さん(女優)と朗読会のテーマとして取り上げた“石川啄木”、そしてだいぶ前に黒田京子さん(ピアノ)と行っていたコンサートシリーズ『軋む音』のテーマの一つとして取り上げた“永山則夫”。
この二人。

永山則夫
永山則夫

キケ人ヤ 世ノ裏路ヲ歩クモノノ悲哀ナ タワゴトヲ 
キケ人ヤ 貧シキ者トソノ子ノ指先ノ 冷タキ血ヲ
キケ人ヤ 愛ノ心ハ金デナイコトヲ 心ノ弱者ノウッタエル叫ビヲ
キケ人ヤ 世ノハグレ人ノパンヘノ セツナイハイアガリヲ
キケ人ヤ 日陰 [ 影 ] 者ノアセト涙ヲ ソノ力ト勇気ヲ
キケ人ヤ 武器ナキ者ガ 武器ヲ得タ時ノ 命ト引キカエノ抵抗ヲ
キケ人ヤ 貧民ノ真ノ願イノ ヒト言の恐シサヲ
キケ人ヤ 昭和元禄ニ酔ウガヨイ 忘レタ時ニ再ビモエル 貧シキ若者ノ怒リヲバ

永山則夫『キケ人ヤ』1969年7月29日『無知の涙』より


石川啄木
石川啄木

森の奥より銃声聞ゆ
あはれあはれ
自づから死ぬる音のよろしさ

人といふ人のこころに
一人づつ囚人がゐて
うめくかなしさ

こそこその話がやがて高くなり
ピストル鳴りて
人生終る

いくたびか死なむとしては
死なざりし
わが来しかたのをかしく悲し

高きより飛びおりるごとき心もて
この一生を
終るすべなきか

かの船の
かの航海の船客せんかくの一人にてありき
死にかねたるは

死ぬことを
持薬(ぢやく)をのむがごとくにも我はおもへり
心いためば

我に似し友の二人よ
一人は死に
一人は牢を出でて今病む

友われに飯を与へき
その友に背きし我の
性のかなしさ

石川啄木『一握の砂』より


永山則夫は牢獄で沢山の詩や短歌をノートに書き留めていました。
短歌に関しては啄木のものを愛読していたそうですし、永山自身の歌もその影響を受けている様に思います。
僕はなぜこんなにも二人に心惹かれるのか???
こんなことを思いながらプログラムを作っています。

今度の木曜日、是非永福町のsonoriumへお越しください!

喜多直毅ヴァイオリンソロリサイタル

喜多直毅 Naoki Kita
喜多直毅 Naoki Kita

出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
内容:オリジナル作品、即興演奏、他

日時:2019年6月27日(木)19:00/19:30
会場:ソノリウム(永福町)
   168-0063 東京都杉並区和泉3-53-16 
   TEL 03-6768-3000
   京王井の頭線 永福町駅下車(北口) 徒歩7分 
   東京メトロ丸の内分岐線 方南町駅下車 徒歩10分

料金:予約¥3,000/当日¥3,500

ご予約/お問い合わせ
◾︎メール:violin@nkita.net
※メールタイトルは「喜多ソロ」、メール本文に《代表者氏名》《人数》《連絡先電話番号》を 必ずご記入の上、お申し込み下さい。

◉ ご予約に際しての注意事項
・ご予約の締め切りは公演前日6月26日深夜12:00までとさせて頂きます。
・10歳以下のお子様のご入場はお断りする場合がございます。

主催・企画制作:喜多直毅
制作アシスタント:山本悦子
協力:齋藤真妃

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