デュッセルドルフより近況報告 ~その3~/リーダーシップについて

喜多直毅, Naoki Kita
ヴァイオリンソロの練習1
2018年5月10日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf

喜多直毅, Naoki Kita
ヴァイオリンソロの練習2
2018年5月10日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf

皆さん、こんにちは。
東京はいきなり寒くなったようですね!
こちらは数日前まで夏日でハーフパンツ・Tシャツ・サングラスでしたがちょっと気温が下がりました。

相変わらず皆藤千香子さんのダンス作品のリハーサルです。
たまにカフェに行ったり外食もしていますが、リハの後はかなり疲れていて、早い時間でもすぐベッドに横になったりしています。
おかげで生活のリズムが規則正しくなりました。
やっぱり日中ある程度疲れるって事は必要なのかも知れません。

喜多直毅, Naoki Kita
ダンサーのミロシュと
2018年5月11日@Weltkunstzimmer, Düsseldorf

さてさて今日は突然ですがリーダーシップについて考えたいと思います。
別に東京で書いたって良い記事なのです。
しかしちょっとこちらで営業的(リーダーとして)なことをしており、メールを書いたり仕事について思い巡らす時に、メンバーの顔が浮かぶからです。

僕は複数のグループのリーダーをしていますし、一回で終わるセッションでもブッキング・宣伝・内容作り(楽譜の用意)…、その他様々な役割を担っています。
大きな公演はアシスタントに手伝ってもらいますし相談に乗ってもらうこともあります。
しかし基本的に決定を下すのは僕の役目です。

音楽内容に関して。
作曲・編曲・選曲は僕が行うことが多いにしても、その楽器を知悉しているのはメンバーですので彼らのアイディアや演奏に委ねるところも大変大きい。
僕は自分の作品を作るために、それぞれの音楽経験や勉強してきたことを“拝借”しているのです。
リーダーとしてできる事は、大元のアイディアを提供し、それをシェアできる方法を考え、演奏の方向性を大まかに決めるだけ。
ステージでは彼らに成り代わって、ヴァイオリン以外の楽器を同時に弾く事は絶対に出来ません。

それに彼らにも宣伝や集客に協力してもらわなければ、お客さんが入りません。
僕一人の動員力なんてたかが知れています。

近頃は人のグループにメンバーとして参加する事は少なくなり、自分のリーダーバンドが殆どになりました。
セッションでも僕がミュージシャンに声をかけて、一つのライヴを行うことが多いです。

ただ、たまに自分はリーダーとして適性があるのかどうか、分からなくなることがあります。
と言うか、人として相手にどう接してるのか、ちょっと不安になったりします。

現場ではメンバーも自分も楽しく仕事がしたい。
創作の現場で余り人間関係のストレスを感じたくない。
そのために普段から頼み方、例えば自分の曲のここをこう弾いて欲しい、といった注文の伝え方に気をつける必要がある(相手が年上でも年下でも)。
相手の練習努力や無視したり、アイディアを頭ごなしに否定しない。
メンバーの話を遮らず、最後まで良く聞く。
ただ、どうしても注意しなければならない時は、一対一、または冷静な第三者を交えて話す。
何でもかんでも許されるわけではなく、最低限のルールみたいなものも必要だとも思います。

また演奏が上手くいかなかった時、口では『しょうがないよ』とか『次は頑張ろうぜ』と言っておきながら、明らかに怒った態度を取るのは非常に良くありません。

こう挙げてみると、自分はず〜っとマイナスなことばかりやって来ました。
今営業活動をしていてそれらの行いが次々と思い出され、自分が嫌になります。
大反省。

前に誰かが言っていましたが、リーダーである自分が喰えていけるのはメンバーが一生懸命演奏してくれるから。
リーダーが『ギャラを払っているんだから何をさせても良い、何を言っても良い』と思い始めると、そのバンドはブラック楽団です。
※もちろんその逆もあり得ます(ブラック楽団員とかモンスターメンバー)。
リーダーとして、これは忘れてはならないと思います。
自分が自分の音楽を演奏していけるのは、メンバーのおかげ。
そして自分がメンバーだったら、演奏の場を作ってもらえるのはリーダーのおかげです。

ちょっと理想論かも知れません。
しかしこうだったら、どんな現場も凄く楽しくなると思う。

昔はおっかない先輩がたくさんいました。
下手な演奏をすると怒られるどころか殴られたりする。
『先輩には絶対服従!』の体育会的人間関係です。
今はそんな先輩は殆どいなくなりました。
一般社会でも一部の企業や学校を除いて、そうなのではないでしょうか?

では実際の現場ではどうか?
リーダー対メンバーの関係に限らずメンバー同士でも、どうも上手く行かないことがある。
普通の会社なら、パワハラ上司がいてキツくても、勤め続けなければならないのかも知れません。
本当にそれは大変だと思います。

しかし我々ミュージシャンはその殆どが個人事業主。
リスクがないわけではないけれど、どうしても耐えられないほど嫌なことがあれば、その仕事から身を引けば良い(もちろん最終手段です)。
不安定な仕事ながら、こうした身軽さがあるのがフリーランサーの良いところです。

僕も余り嫌なことがあったら身を引きます。
多分三回〜五回までは我慢する。
でもそれ以上は無理。
そんなストレスまみれの現場で良い音楽が出来るはずがない。
それともギャラのために心を殺してその演奏を続ける???
僕には到底無理です。

自分がリーダーでグループをやっている時、メンバーには出来るだけ良い環境で演奏して欲しい。
もちろん様々な現場があり物理的環境が余り良くない場合もある。
いつも良い状態でリハーサル・本番が出来るわけではない。
そしてギャラも十分に払えないこともあり、不甲斐なく思うことも多い…。
でも心理的・精神的には良い仕事環境を提供できたらと思います。
(これまでの反省も込めて)

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