演奏後記:2018年4月4日・元井美智子さん(箏)との即興演奏@音や金時

ホント、春らしい陽気が続いています。
花粉症の方には申し訳ないのですが、僕はこの季節が一番好きです。
・だんだん暖かくなっていく
・湿度が低く爽やか
・キモい虫が出ない
もう言うことなしです。

昨日もそんな気持ちの良い天気の中、西荻窪・音や金時で箏の元井美智子さんとライヴでした。
元井さんとのライヴは今日で三回目。
前二回は楽曲も演奏していましたが、今回は即興演奏のみ。
30分弱の演奏を二回行いました。

元井さんは現在、江戸時代から伝わる箏を借りて弾いていらっしゃいます。

江戸時代から伝わる箏。細工が美しい。

音の深みと余韻が大変素晴らしい。
音色がとても柔らかい。
前回に続き、昨夜もその箏のオーナーの男性が聴きにいらっしゃいました。

開演前、オーナーの方がテーブルに置いて見せてくださったのが沢山の折り紙。


和紙で織られているそうで、雰囲気が素朴で暖かい。
亀の上に鶴の乗った縁起の良い作品や、小さな鶴達が羽と羽で繋がった連鶴、その他、雉やカマキリもありました。
どれも一枚の紙から折られているのだそうです。
凄いです!

そして折り方を編み出したのは、元井さんが弾いている江戸時代の箏を作った人なのだそうです。
ちなみにこの人は目が不自由で、手先だけではなく、紙を口にくわえた感触で折り紙を次々に作っていたのだとか。
その折り方は大変独創的で、複雑な現代折り紙にも匹敵するものなのだそうです。
素晴らしい箏を作りながら、しかも目が見えずとも高度な折り紙を作っていた…。
実に天才的です。

ちなみに見せて下さったのは復元。
でも大変美しい。
オーナーの方がステージに椅子を置いて、上に並べて下さいました。
箏・ヴァイオリン・折り鶴達の共演です。


元井さんとの即興演奏は水の上に浮かべた笹舟のごとく、無理な力を入れずともスーッと進んで行きます。
今出した音が次の音へと自然に導いてくれる。
櫓を漕ぐ手を休めても、船はしばらく推進力を失わない。
ある意味、とてもとても楽なのです。

vln:喜多直毅/箏:元井美智子

vln:喜多直毅/箏:元井美智子

vln:喜多直毅/箏:元井美智子

vln:喜多直毅/箏:元井美智子

演奏する手を止めても、演奏者と聴く人の中では音はまだ鳴っていたりする。
空気振動的な音は鳴っていなくても、耳の奥では余韻が続いていたりする。
そこに意識を向ける時、演奏の意味合いやあり方が変わって来る。

ある地方のライヴハウス、そこのオーナーは自分で照明をなさいます。
彼曰く『照明とは美しい闇を作ること』。

演奏家も作曲家も音を鳴らす事の方についつい意識が向いてしまう。
どんな美音を奏でられるか、どんな難しいパッセージを弾きこなせるか、などなど。
こんなふうに演奏している方が、手っ取り早く『音楽をやっている』実感が持てる。

ただ立っていることがどれ程難しいか。
多くのダンサーが知っていると思います。

音楽には美しい静寂が無ければ。
そして静寂を作り出すのはやはり音。
こう考えると、奏でる音がどう静寂に作用するのか自ずと考えるようになる。
そうすると音を発する事にまた別の意味や目的が生まれて来る。
それがあるとないとでは大違い。

昨夜の元井さんとの演奏を通して、こんな事を考えました。

元井さんとのデュオは再演の声も多く、是非また行いたいと思います!
昨夜は新しいお客さんが二組も来て下さいました。
そのうちのお一人は箏をお弾きになる方で『目からウロコが何枚も落ちた』とおっしゃいました。
また聴きに来てくれると良いなぁと思います。

さてさて昨夜は箏との演奏なので、僕も和風な服を来て行きました。
これ、下北沢の“泥棒日記”でだいぶ前に買ったものです。


背中と腕に鶴の刺繍!
そしたら会場には折り鶴もあった!
何という偶然!

ちなみに黒田京子さん(pf)とのデュオでは、『鶴』と言うロシアの曲も良く演奏しています。
もう釧路湿原に行くしかない!

『鶴』
作詞:ラスール・ガムザートフ/作曲:ヤン・フレンケリ


追記:
次回公演、以下の通りに決まりました!

出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
   元井美智子(箏)
内容:即興演奏

日時:2018年7月21日(土) 18:00開場/18:30開演
会場:松本弦楽器(代々木)
   東京都渋谷区千駄ヶ谷5-28-10
   ドルミ第二御苑804号室
   03-3352-9892(場所の問い合わせのみ受け付け)

料金:予約3,000円/当日3,500円(1ドリンク付き)
ご予約・お問い合わせ:violin@nkita.net(喜多)

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