学生時代を懐かしんで多摩地区ウォーキング(小平〜立川)。何だかこっちに引っ越したくなって来た…。

喜多直毅

学生時代を過ごした懐かしの街・小平〜立川へ散歩に行って来ました。


まず西武新宿線の小平駅で降り、緑道を萩山駅から八坂駅へズンズン歩く。
ひたすら歩く。
※あ、小平駅の立ち食いそば、美味いっすね〜!朝飯代わりのワカメ蕎麦。

そこから野火止用水へ。
ここは小川のほとりに続く緑道。
箇所によっては雑木林の中を通ります。
木々が風にそよぐ音、本当に気持ちいいなぁ…。
川には鴨が泳いでいたり、草むらを猫が歩いていたり。
それと蛍を育てている一角もありました。

浅瀬では近所の子供達が遊んでいる。
実にのどかな初夏の昼下がりです。
夏日だったけど木陰に入ると涼しい。
日本の気候が一年中こうだったら良いのに…。

もうすぐジメジメジトジトした梅雨がやって来ます。
今を逃すと散歩なんてしてる場合じゃない!
雨が降って道はぬかるみ、おまけにヤブ蚊に刺されます。
5月末は散歩の最後のチャンスかもしれません。

途中、公園があったので休憩。
ここでちょっと童心に帰って、ブランコにでも乗ってみるか…。
と、思い立ったは良いものの、すぐさま筋力の衰えを実感!
立ち漕ぎが怖いのです。
腕力と握力が落ちていて、掴んだ鎖を離しそうになる!
それとジャングルジムも危ない。
注意力が散漫になり、思わず足を踏み外しそうになるのでした。
まるで自分の人生みたい…。

仕方がないので座って楽しむブランコ。
あ〜〜〜、風が気持ちいいなぁ…。
日常を忘れてずっとこのまま漕ぎ続けたい。
アルプスのハイジの家が見えてくるかも。

喜多直毅

僕はホント、この辺りが大好きなのです。
野火止用水とか玉川上水のほとりに続く遊歩道は緑に囲まれて最高です。
命の洗濯。

今は23区内に住んでいますが、そのうちこちらに引っ越して来たいなぁ…。
野菜の無人販売所があったり、昔の農家があったり、大きな欅があったり。
美味い蕎麦屋もある。


さて野火止用水沿いをずっと歩くと西武拝島線の東大和市駅へ辿り着きます。
かつての僕の下宿の最寄り駅。
駅の南側には薬用植物園があります。

今日は植物園には行かず国立音大の学食でカレーを食べようと思っていたのです。
安いし美味いし(大盛りで¥300)、とにかく懐かしい!
しかし既に閉店時刻を回っていました。
仕方がないので学生時代に暮らしたアパートの方へ。


昔(約20年前)、この辺りは余り店もなくて、一人暮らしの学生にはちょっと不便な地域でした。
セブンイレブンとすき家、それと近所の炉端焼きの店には大変お世話になったけど、他には何もない。
スーパーも本屋も遠い。
それなのにラブホテルは二件向かい合わせにある。
しかし現在はドラッグストアや札幌ラーメンの店、回転寿司もオープンしていて随分賑やかになりました。
今ならこの辺りに住めるかも!?

そんな事を考えながら歩いているうちに当時の下宿前に到着!!!
向かいの家の犬にさんざん吠えられながら記念撮影。

喜多直毅
いろんな事があった懐かしのアパート。僕の部屋は209号室。

ここは音大生専用のアパートで、夜の10:30までならどんなに音を出しても平気でした。
でも全く防音されていない。
周りは普通の住宅街なのに。
だからピアノはもとより、サックス、ホルン、トランペット、歌、等々…、様々な練習音が近隣一帯に遠慮無く響き渡っていました。
騒音アパートです。
かなり迷惑ですよね。

僕はこの建物の209号室に住んでいました。
二階の廊下の一番奥の部屋。

で、その部屋のすぐ隣にはかつて鉄工所がありました。
窓を開けて手を伸ばせば直ぐに工場の裏階段に届くくらい。

ある夜、悲鳴で目が覚めました。
「キャー、助けてー!!!」みたいな感じ。
何人かが大きな足音を立てて凄い勢いで裏階段を駆け下りていく。
飛び起きてカーテンを開けてみると、火がボーボーと燃え盛っているではないですか!
窓の直ぐ外、炎がこちらに届きそうなくらい!
一瞬で目が覚めました!

急いで服を着て飼い猫(ニコちゃん)を箱に入れてアパートから避難。
アパートの駐車場には住人(音大生達)や管理人、近所の野次馬等が大勢。
消防車の到着を今か今かと待っている。

実はこの一件で僕が猫を飼っていることが管理人にバレたのです。
ペット禁止の物件なのに可愛いから飼っていたのです。
でも他にもウサギやインコを飼っている人がいて、バレてもちっとも怒られずに済みました。
心の広い管理人さんで良かった!

幸い我が下宿に火が燃え移る事はありませんでした。
僕はその夜のうちに自分の部屋に帰って眠れたのですが、隣りの工場はほぼ全焼。
建物の上が寮になっていたそうで恐らくそこで火が起きたのでしょう。
しかし亡くなった方はおらず取り敢えずホッとしました。

結局この六畳一間のアパートには4年間住んだのですが、色々な思い出が沢山詰まっています。
ヴァイオリンやピアノを弾いたり作曲をしたり、たまには友達が来て鍋やお好み焼きをしました。
本も沢山読んだし映画のビデオも沢山見ました。
自分の将来が分からなくて、横になったまま天井を見つめていたりもしました。
そしてやる気を起こしてまた音楽に向かう…の繰り返し。
実際、今でも余り変わりありません。

このアパートの前に立つ時の気分は、その時の自分の状況によってかなり違います。
人生が上手く行っている時は、当時の自分を可愛い後輩のように思う。
未熟さも失敗も若さゆえ。
全て微笑ましい。

でも今の自分が人生の谷底にいたり惨めな境遇だったりすれば、当時の自分に辛く厳しくあたりたい。
『お前がしっかり勉強しないから今の俺が苦労するんだ!』
そして若者の夢を壊したくなる。
『人生、そんなに甘くないよ』
『正直者が馬鹿を見るんだよ』
『所詮、皆んな他人』
『世の中、金と権力を手にした者が勝ちなんだよ』

しかし、やっぱり若かりし頃の自分を裏切りたくないもの。
大人になっても一生懸命に生きている姿、昔の僕に見せてやりたいと思うのです。

本当は僕が暮らした部屋の前まで行ってみたかったのですが、さすがにそれは止めておきました。
今の住人に不審者と思われて通報でもされたら厄介です。

あ、良いことを思いついた。
次の4月にもう一度209号室を借りるってのはどうだろう???
もし今の住人が音大を卒業して引っ越して行くのであればそれも可能ですよね。
どうせなら音大にもう一度入学するのもありかも?
今度はヴァイオリン以外のピアノや管楽器や作曲を学んでみたいです…。


さて次はこの懐かしいアパートを後に、近くの幸町団地へ向かいます。
実は僕は団地マニア。
色々な街の色々な団地を見て回るのが本当に好きです。
団地って郷愁にあふれていますよね。
サウダージとノスタルヒアの世界。

今住んでいる街には国内でも有数の巨大団地があります。
とは言え、狙って住んだわけではなく、引っ越してみたら近くにそのデカい団地があっただけの話。
でも団地の神様が僕をここへ導いたのではないか?とさえ思う。
やっぱりその神様の御業か、学生時代の下宿近くにも素晴らしい団地があって僕はラッキーでした。
学校への行き帰り、敷地の中を通ったものです。
ちなみに裏手は玉川上水沿いの緑道。
素晴らしいロケーションですね!

団地の中には広場や野球場があり、そこかしこに手入れされた木が立っています。
住宅と住宅の間はゆったりとスペースがあり、芝地になっています。
早速ベンチにごろ寝。
木陰には心地よい風が吹いて本当に眠ってしまいそう。
あ〜、パラディーソ!

喜多直毅
寝落ちしそうなほど気持ち良い!

さて団地のすぐそばにドイツのソーセージとハムを売る店を発見しました。
デリカテッセン ゼーホフ工房 立川店
本場・ドイツ製法ハム・ソーセージ  ゼーホフ工房

店内には色々な種類のハムとソーセージ。
勿論全て手造りです。
ドイツ国内で行われるソーセージコンクールでは金賞や銀賞を幾つも受賞しているのだとか。
す、すげえ…。

早速パンとハムを購入。
団地のベンチで食べてみた。


美味い!!!
これは絶対にオススメです!!!
ドイツびいきの僕が言うのだから本当です!
地元の人に連れられて、南ドイツの凄い田舎の養豚場にハムを買いに行ったこともあるんだから!
でもここのはもしかしたらドイツで食べたのよりも美味いかも…。

ということで、このお店は実に素晴らしいので皆さん絶対に行ってみてください!
イートインスペースはありませんが、店の外にテーブルが置いてありました。
僕のように団地の広場のベンチに座って食べるも良し。
皆さん、近くに行くことがあったら是非お立ち寄り下さい。


美味しいドイツのハムとソーセージの後は、ゆっくりと農作地帯を散歩。
住宅街と言えば住宅街なのですが、でもまだ雑木林や畑が沢山残っています。
ホント、のんびりしてるよなぁ。
やっぱりここに帰ってこようかな…。
上水の緑道、ノスタルジックな団地、そしてドイツのデリカテッセン。
最高じゃないすか。

そんな事を考えながら歩いていると辿り着いた古民家園。
(写真を撮るのを忘れたのでネットから拝借してきました。スミマセン。)


築約150年の農家です。
中に入れるようになっているので、早速上がって靴下を脱ぐ。
木の床、畳。
自然物で出来た床にはやっぱり素足が気持ち良い。
歩き続けて火照った足裏が冷やされる。
開け放した障子からは夕暮れの風が…。
あぁ、もうウチに帰りたくない。

喜多直毅, Naoki Kita

縁側に腰掛けて、ちょっと考えてみた。
もしかしたら多摩地区に戻って来る時期なのかも?
こんなにここが気持ち良くて落ち着くなんて。

喜多直毅, Naoki Kita
囲炉裏もあるぜ!魚や餅を焼いてみたい…。語り部のおばあさんの膝には猫。

学生時代、卒業したらもっと都心に住んで便利でオシャレな生活をしたいと思っていた。
オシャレじゃなくても、とにかく利便性。

でも木や水や風がやっぱり必要。
それと畑。
そこで採れた野菜。
こういったものは都心にはない、残念ながら。

喜多直毅, Naoki Kita
庵ごっこ

庵を結ぶ。
まだそんな歳でもないし、悟りみたいなものもありません。
執着だらけです。
庵ごっこと言っても良い。

でもちょっと世の中から後退する。
そんな暮らしがしてみたい。
まずは多摩地区の、どこかの駅からちょっと離れた所に住んでみるのも良いかもしれません。
(いきなり山奥とか田んぼの真中は絶対無理。)
一軒家じゃなくても良い。
普通のマンションとかアパート、或いは公団住宅で物を増やさずコジンマリと暮らすのはどうか。

立川市や小平市にお住まいの方からは『そんなにここは田舎ではない!』とお叱りを受けるかもしれない。
『そんなに良いものではありませんよ』と笑われるかもしれない。
でも20年前に実際に住んでいた僕が、今とてもこの地に惹かれている。
あの頃はちっとも良いと思わなかったのに、今住んでみたいと思う。
それは事実。

都心に近づけば近づくほど、人間の思いや念を巨大な渦巻きの様に感じる。
それが様々な顔を持ち出来事に溢れる都会の面白さだったりもする。
一方で都心から離れれば離れるほど、自然物のエネルギーが増すように感じる。
中央線に乗るとそれが何となく分かります。
※そう言えばフランスに住む即興演奏家達は皆パリから外へ出るなぁ。

出来ればたまには銀座や新宿で食事をしたり、神保町で古本を漁りたい。
そうなると余り遠くへは住めない。
だから1/3は都会、2/3は郊外っていう暮らしが良いのかな。


それにしても良い散歩でした。
空は青々、風は爽やか。
もう少し緑のある場所に引っ越したいという意外な気持ちも芽生えた。

ウチからは一時間半ほどかかるのだが、また絶対に来よう!
次はタオルを持って日帰り温泉にでも寄ってこようか。
皆さんもどうぞお出かけ下さい!

喜多直毅, Naoki Kita