喜多直毅クアルテット次回の公演は5/17(火)@公園通りクラシックス / PAを使うことについて

喜多直毅クアルテット:作曲/Vln喜多直毅 Bandoneon北村聡 Pf三枝伸太郎 Cb田辺和弘

喜多直毅クアルテット:作曲/Vln喜多直毅 Bandoneon北村聡 Pf三枝伸太郎 Cb田辺和弘

昨日は喜多カル@新宿ピットイン公演へお越しくださいまして有難うございました!

普段と違う環境で演奏が出来て、とても新鮮!
普段は60分一本勝負のところ、休憩を挟んで50分2セットの演奏。
時間配分、そして体力気力の持続を考慮としてのライヴとなりましたし、僕個人に関してはやはり2ndセットの途中では消耗した感も否めません。
しかし喜多カル独自のストーリーも表現できて、お越しの方から「まるで映画のようだった」と言って頂きました。
嬉しい!

次回は5/17(火)の夜。
会場は渋谷に戻り、公園通りクラシックスです!
ぜひお越しください!

さて昨日は喜多カルには珍しくPAを使いました。
これには今までの喜多カルを聴いて下さっている方からは賛否両論のご意見を頂くでしょうが、しかしヴァイオリンを担当する僕にはとてもとても弾きやすい環境でした。

普段、出来ない表現が出来ました。
例えば微弱音の中でのサウンドの変化を明瞭に客席に届けられる。
音を激しく弾き切った後に残る残響によって、無伴奏部分に十分な間を作れる。
他の楽器がmfからf程度の音量で鳴っている中で、多少静かに弾いてもしっかりとヴァイオリンが前面に出る。

自分で作曲して自分のバンドを演奏してきて約10年。
これほど自作曲の中で、ヴァイオリンを有効に使えたのは恐らく今回が初めてです。
実は何を隠そう、今まではバンドネオン・ピアノ・コントラバスが中心のアンサンブルとして作っており、ヴァイオリンは香り付けとか装飾としての役割にその存在を当てて来ました。
そして『聴こえなくても仕方がない』という気持ちも若干あったのです。
しかし昨日はヴァイオリンの存在感を前面に出して、“曲の心”を更にむき出しに出来たのではないかと思います。
(もちろんこれはステージ上の僕の印象であって、客席の方はまた別の印象を抱いて当然です。)

ここ10数年、タンゴ以外の現場では僕はPAやアンプを使うことはほとんどして来ませんでした。
特に即興演奏の場合はほぼ100%生音です。
会場が狭くても広くても、です。

ところが先日、ピアニストの照内央晴さんとのライヴで思い切ってPAを使ってみたら、本当に本当に本当に楽だったのです!!!
今まで出来なかった表現も可能になり、しかもいつも以上にインスピレーションも湧いて来る!
照内さんにはこれまでヴァイオリンの音量を考慮して小さく弾いてくださいと頼んで来たのですが、そのライヴでは照内さんも普段通りの音量で思い切り弾けたのではないでしょうか。
もちろん照内さんはppでも演奏できる方ですが、やはり盛り上がった時は思い切りffで弾きたいはずです。
僕がPAを使って音量を得た分、照内さんのダイナミクスも広がったのでは?と想像しています…。

対してタンゴの場合、ピアノもバンドネオンもガッツリ・ガンガン弾いて欲しい。
しかしその音量にヴァイオリンは到底太刀打ち出来ない、ということで、タンゴ演奏の場合はマイクを使っています。
実は喜多カルの場合も楽器編成とか曲の持つパッションはタンゴと同レベル、否、それ以上であって、やはりヴァイオリンはマイクを使ってこそ歌えて、バンドネオンに並ぶメロディ楽器として音楽に参与できるのではないかと思いました。

アンサンブルの鉄則として、音量は一番小さな楽器に合わせる、というのがあります。
ヴァイオリンとピアノのデュオ、例えばブラームスのヴァイオリンソナタなんてピアノは信じられないほど小さな音で弾きます。
歌曲の伴奏も然り。
音数が多い曲の場合、小さい音で弾き続けるのは至難の技だと思います。

しかし喜多カルの音楽の場合、ブラームスとか歌曲とは違うのです。
やはり曲のクライマックスでは“ガッツリ弾かなければ出ない音”を出して欲しいと思っています。

…と、かなり長い記事になってしまいました。
そのうちリヴァーブ(電気的な残響効果)についても書きたいと思います。

これからどのライヴにもPAを使うわけではありませんが、もう少し機会は増えるかも。
会場によって、演奏する音楽によって、です。

ストイックに生音で演奏して来ましたが、ヴォーカリストのようにマイクを使用するのもありかな。
大きめのライヴハウスならなおさら。
歌手って声を張ったかと思えば、囁いたりもするでしょ?
僕はベルカントのヴァイオリン奏者ではありません。
大声で歌ったり金切り声もあげるけど、囁いたり、呟いたり、うめいたり、口ごもったりもしたい。
音の濁流の中にあっても、心の中に微かな叫びはあって、それをしっかり伝えたい。

コメント