演奏後記あれこれ・12月11日は三鷹ウナマスで喜多直毅タンゴトリオ!!!

OFF/STRINGツアーで即興演奏が続き、トナリティとメロディに飢え渇いていた心にアルゼンチン・タンゴ!
京谷弘司タンゴトリオのライヴが二日間連続で行われ、久しぶりの『どタンゴ』を心ゆくまで楽しみました。

ところが今度はまた即興演奏。
でも共演者が違うのでまた楽しい。
11/22は翠川敬基さん(vc)、深山マクイーン時田さん(箏)とのトリオでした。

2018年11月22日@大泉学園inF 喜多直毅(ヴァイオリン)翠川敬基(チェロ)深山マクイーン時田(箏)
2018年11月22日@大泉学園inF
喜多直毅(ヴァイオリン)翠川敬基(チェロ)深山マクイーン時田(箏)

演奏内容は即興とは言えテーマとなる曲があります。
シュトックハウゼンの『Teirkreis』から4曲と翠川さんのオリジナル、富樫雅彦さんのオリジナルです。
一曲目はまだちょっとOFF/STRINGの感じが身体に残っており、ちょっとシュトックハウゼンに乗るのが大変でした。
しかし二曲目以降は翠川さんのロマンティシズム、深山さんの深く美しい音色と間合いに助けられ、徐々に音楽に溶けていくことが出来ました。

このトリオ、年明け1/5にライヴを行います。
是非ご注目頂きたいと思います!

出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
   翠川敬基(チェロ)
   深山マクイーン時田(箏)
内容:即興演奏
日時:2019年1月5日(土)18:00開場/19:00開演
会場:inF(大泉学園)
   東京都練馬区東大泉3-4-19津田ビル3F
   03-3925-6967
料金:¥3,500+オーダー
ご予約&お問い合わせ:
   03-3925-6967
   in-f.sato@nifty.ne.jp

翌日11/23はファドも計画でした。
さがゆきさん、翠川さん、喜多のトリオ。
ファドや演歌、昭和歌謡などをレパートリーにしていますが、回を重ねるごとに深化しています。

2018年11月23日@大泉学園inF ファドも計画:左から喜多直毅(ヴァイオリン)さがゆき(歌&ギター)翠川敬基(チェロ)
2018年11月23日@大泉学園inF
ファドも計画:左から喜多直毅(ヴァイオリン)さがゆき(歌&ギター)翠川敬基(チェロ)

人生は呼吸のようなものだと思います。
「吸って吐いて」を繰り返しながら歩んで行く。
平坦で楽な道では呼吸していることすら忘れて景色を眺める余裕があり、坂道では息切れがする。
そして所々にため息を吐く夜がある。
ファドも計画にはため息の音があり、声にならぬ叫びがあると思います。

昭和という時代、街角にはまだ“闇”があった。
その闇に、人々は誰にも言えない悲しみや孤独を委ねて安らぎを得ることが出来たのではないかと思います。

我々はただ“歌”を演奏するだけではなく、即興演奏をふんだんに取り入れて演奏しています。
だから皆さんの知っている有名な曲でも違う角度からその歌に描かれた人物や風景を眺めることが出来るのではないかと思います。

ファドも計画も次の演奏が決まっています。
是非ライヴにお越し下さい!

出演:ファドも計画
   さがゆき(vocal and guitar)
   喜多直毅(violin)
   翠川敬基(cello)
   内容:日本語によるファド、昭和歌謡、演歌、オリジナルetc
日時:2019年3月17日(日)14:00開場 15:00開演
会場:雑司が谷TANGO BAR エル・チョクロ
   〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-2-8
   03-6912-5539
料金:ご予約¥3,900 当日¥4,300
予約・問合せ:エル・チョクロ
   03-6912-5539/info@el-choclo.com
         violin@nkita.net(喜多)

一日空けて11/25は長浜奈津子さん(女優)と続けているユニット・おとがたりのライヴです。
会場としてお借りしたのは要町の藤香想という古民家カフェ。

要町・藤香想。古民家を改装したカフェで食事も美味しいです。
オーナーの方は何と国立音大の先輩でした!

木造りの室内で音の響きも大変ナチュラル。
気持ちよく演奏させて頂きました。

今回の朗読の演目はオスカー・ワイルド作『幸福の王子』。
これは子供の頃から大好きな物語です。
ご存知の方も多いでしょう。
もしまだお読みで無い方は素晴らしい話なので是非お読みいただきたいと思います。

街の貧しい人たちや不幸な境遇にある人たちに、王子の像とツバメ(どちらも擬人化されている)が王子の身体を飾る宝石や金箔を届けるという話です。
王子は目に嵌められた宝石をツバメに外すように頼む。
しかしそれによって王子は目が見えなくなってしまう。
ツバメはためらいつつも言われたようにするのです。

最後、ボロボロの姿に変わった王子の像を街の人たちは廃棄処分にしてしまいます。
見た目が美しくないから。
そして冬を王子と共に過ごしたツバメも、王子の足元で息絶えてしまいます。

こんな粗筋です。

ざっくり言えば“愛とは何か?”とか“自己犠牲”がこのお話のテーマなのかなと思います。
登場人物、物語の内容、登場人物の会話が非常にキリスト教的で、福音書をイメージさせる部分も沢山ありました。

僕が気になったのは、王子が宝石や金箔を与えることによって憐れな人々を救いつつも『人はお金があれば幸せになれると思っているのだ』とツバメに語った言葉です。
もちろん生きていくためにはお金は必要。
お金そのものを悪と見なすことは出来ない。

しかし王子のこの言葉にはどこか人間に対する諦念を感じるのです。
そして諦めと共に深い慈しみも感じる。
お金や地位、健康、美貌があれば、人は幸せになれると信じている。
僕も含めて、人間にはそう言うところがある。
そして王子やツバメのように、自分が死んでも、醜くボロボロになって棄てられても、人の幸せのために全てを捧げることが出来るか?と問われれば、決して出来ない(少しなら出来る、少しなら)。

このように富と地位と成功と表面的な美しさばかりを追い求めてしまう私たち、自分を低くして他者のために仕えることの出来ない私たち。
そんなどうしようもない私たちでも王子は街の人々を愛し、与え続けた。
イエス・キリストの姿を彷彿とさせます。

私たちは一生かかっても王子のような愛には及ばない、と思います。
(死ぬまでに0.1mmくらいなら何とかなるかも?)
あのマザー・テレサでさえ、自分の愛が本物かどうかずっと悩んでいたと聞いたことがあります。

僕は最初から自分は愛情に欠けた人間だと思っています。
完全に自己中心主義です。
ただ困っている人は助けたいと思う。
しかしこの気持ちも曲者で見返りを求める気持ちがどこかにあったり、『良い事した俺、最高!』とか思ってしまいます。
自分でも気がつかない無意識のうちに誰かを愛していて、誰かの役に立っていて、そういうふうだったら良いのですが。
愛は能動的と言いますが、そうだとしても余り意識過剰ではドグマティックになりそうな気がします。

しかし先日、ある人から『あなたは音楽を通して人に愛を届けているじゃないですか?』と言われてビックリしました。
そんなこと微塵も思って来なかったからです。
ただ自分の好きなことをやっているだけですよ。
その方がどう言う意味で“愛”という言葉をお使いになったのか分かりませんが、少なくともそう感じてくださっていることがちょっと嬉しかったです。

そもそも喜びのないところに愛は無いのかも知れません。
無理にでも自らを低くして他者に使えることは、度が過ぎればキリスト教でいうところの律法主義に陥り、そう出来ない自分を裁き、やがて『お前には愛がないじゃないか!』と他者をも裁くようになりかねません。
もちろん『度が過ぎれば』の話ですよ。

以上、『幸福の王子』をやってみて考えさせられたことです。

さてこの日のライヴでは二人とも立ってパフォーマンスを行いました。
奈津子さんは語りと共にまるでダンスのように身体が自由に動き、僕にとって大変新鮮でした!
椅子に座って台本を読みながら…よりも、何か羽ばたきが感じられました。

歌のコーナーではギター弾き語りを止めて、歌とヴァイオリンのみのデュオ。
これもまた新鮮でした!!!
基本的にヴァイオリンはメロディ楽器で歌みたいなものです。
音域も女声とほぼ一緒。
ということである意味、女声歌手が二人状態となったのですが、こうなるとお互いが何をどう奏でて歌うのか、一人一人の責任がグッと重くなる。
それぞれが自立していないと上手くいかないし、良く聴き合わないとダメなのです。

僕も「どう弾いたら奈津子さんが歌いやすいか」だけではなく、「どう弾いたら歌とヴァイオリンのみで演奏している“意味”があるのか」を一生懸命考えるきっかけとなり、実に刺激的なライヴとなりました。

次の奈津子さんとのライヴも決まっています。
日程はクリスマスイヴ!
朗読作品は『ナイチンゲールと紅いバラ』です。
これもオスカー・ワイルドの作品。
音楽のコーナーはまた歌とヴァイオリンのみでお届け出来たらと思います(奈津子さんはギターを持って来ずに済むので荷物が軽くなる)。
皆さん、ぜひお誘い合わせの上お越し下さい!

2018年11月25日@要町・藤香想 おとがたり:喜多直毅(ヴァイオリン)長浜奈津子(朗読・歌)
2018年11月25日@要町・藤香想
おとがたり:喜多直毅(ヴァイオリン)長浜奈津子(朗読・歌)

出演:おとがたり~朗読とヴァイオリンの世界~
   長浜奈津子(朗読、歌、ギター)
   喜多直毅(ヴァイオリン)
内容:朗読『ナイチンゲールと紅いバラ』(オスカー・ワイルド作)、歌とヴァイオリン演奏による音楽
日時:2018年12月24日(月)18:45開場/1st19:30/2nd21:00
会場:月夜の仔猫(新橋)
   東京都中央区銀座8-3-11和恒ビルB1
   03-3573-3651
料金:¥4,500+オーダー
予約・問い合わせ:03-3573-3651

そしてもう一つ宣伝。
12/11(火)に三鷹駅すぐ近くのウナマスというライヴハウスで、喜多直毅タンゴトリオのライヴを行います。
喜多直毅クアルテットのようなオリジナル作品ではなく、即興演奏でもなく、いわゆる『普通のタンゴ』を演奏します。
フェデリコ、レケーナ、リベルテーラなどのロマンティックでドラマティックな曲を中心にお届けします。
いつもは雑司ヶ谷のエル・チョクロで演奏していますが、武蔵野・多摩地区の『雑司ヶ谷はちょっと遠いよ〜』という方、是非是非お越し下さい!

喜多直毅トリオ:喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)松永裕平(ピアノ)
喜多直毅トリオ:喜多直毅(ヴァイオリン)北村聡(バンドネオン)松永裕平(ピアノ)
写真は2018年10月9日、雑司ヶ谷エルチョクロで撮影。

喜多直毅タンゴトリオ
出演:喜多直毅(ヴァイオリン)
   北村聡(バンドネオン)
   松永裕平(ピアノ)
内容:アルゼンチン・タンゴ
日時:2018年12月11日(火)19:00開場/19:30開演
会場:UNA MAS(三鷹)
   東京都武蔵野市中町1-10-6三鷹北口共同ビル2F
   Tel:0422-36-6252
料金:¥4,000
ご予約&お問い合わせ:
   UNA MAS 0422-36-6252(19:00~23:00)
   violin@nkita.net(喜多)

サイトのスケジュール更新、遅々として進んでおりませんが毎日一つずつ(何という遅さ!)更新していきたいと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いします!

藤香想でのライヴの後、打ち上げをしました。要町の中華料理店。
久しぶりに火鍋。野菜が沢山食べられてヘルシー。
好きな野菜をビュッフェみたいに選べるんだけど、ベロベロした麺の様なところてんの様なものは嫌いです。

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